密猟、盗掘、大量持ち出し… 事案頻発、生態系保護の課題は 奄美群島
2025年05月08日
自然・気象

観光客らに希少種の捕獲・採取に関する規制やルールを普及啓発する関係者=2日、奄美空港
奄美大島で7日、国の天然記念物に指定されているオカヤドカリ数千匹を正当な理由なく所持したとして、文化財保護法違反の疑いで中国籍の男3人が逮捕された。沖縄県と奄美群島では近年、希少種や固有種を島外へ持ち出そうとして摘発される事案が頻発している。地元では対策を進めているが、「法の網をかいくぐるような事例が次々と起こる。動植物の持ち出し全般を原則禁止する必要があるのでは」との声もあり、関係者は頭を悩ませている。
希少種や固有種は法律や県・自治体の条例で捕獲や採取、移動などが規制されている。奄美群島では関係機関が連携し、空港やフェリー乗り場での普及啓発活動や合同パトロール、監視カメラの設置、空港での希少種判別などに取り組んでいる。奄美市は今年度、オカヤドカリの保護啓発に向けたポスターを作成し、空港やホテルなどに配布する予定。
一方、規制対象外の生き物でも、営利目的とみられる大量の持ち出し事案が発生している。環境省によると、国内でペットとして売買されているアマミシリケンイモリやクワガタなどは毎年のように数十~数百匹単位で持ち出され、生態系保護の観点から問題視されている。また、水際対策で動植物が保護されたとしても、遺伝的特徴や病害虫汚染の観点から自然に戻せない可能性もあるという。
動植物の島外への持ち出し全般を禁止する条例を求める声もあるが、奄美市の平城達哉学芸員は「極端に規制を厳しくすればアマチュアも含めた研究者たちの活動が制限されたり、子どもたちが生き物と触れ合う機会が失われたりする恐れがある」と指摘。「啓発活動を強化し、地元で生態系保護への関心を高めることが重要だ」と語った。
環境省奄美群島国立公園管理事務所の興津絵美国立公園管理官は「奄美・沖縄は生物多様性が評価され世界自然遺産に登録された。何千年とその場所で暮らしてきた生き物たちへ尊敬の気持ちを持って接してもらいたい」と話した。