アイノコ双胴船の進水式 安全航海と伝統継承を願う 奄美市名瀬

2023年02月09日

地域

安全を祈願し、進水を祝う関係者=8日、奄美市名瀬の知名瀬漁港

奄美市名瀬知名瀬の船大工、坪山良一さん(59)が製作したアイノコ双胴船(そうどうせん)「伝泊Catamaran(カタマラン)」の進水式が8日、同市名瀬の知名瀬漁港であった。船主で、同船をデザインした建築家・山下保博さん(奄美イノベーション代表取締役社長)や安田壮平奄美市長ら関係者16人が集まり船の誕生を祝福。航海の安全を祈願するとともに、奄美の伝統文化継承への決意を新たにした。今後は笠利湾での海上試運転を重ね、最終的な船舶検査を経て運用開始を目指す。

 

アイノコは沖縄のサバニと奄美の板付け(イタツケ)の長所を兼ね備えた木造船。「伝泊Catamaran」は2隻のアイノコを一つにつないだ初めてのアイノコ双胴船で、全長約7・5㍍、全幅約3・6㍍。湾内での体験サービスなどの利用を想定している。

 

船体は坪山さんの工房から漁港の岸壁へトラックで輸送。クレーンにつられゆっくりと海へ降下、着水した。船主の山下さんと船大工の坪山さん、安田市長が塩と米、お神酒で船を清めた後、関係者も続いて乗船。無事の進水を祝い全員で乾杯した。

 

安田市長は「奄美の日本復帰70周年の年に、新たな挑戦が始まったと感じた。今後の展開を楽しみにしている」と話し、坪山さんは「一人で船を作ることはできなかった。多くの人に助けられ今日に至ることができた」と無事に進水した喜びを語った。

 

アイノコの造船技術を持つのは現在、世界中で坪山さんただ一人で後継者の養成が急がれる。山下さんは「坪山さんの技術を失うことは、奄美にとって財産の喪失。今後も伝統継承に向け協力したい」と語った。