医療功労賞に加納さん ハンセン病元患者を支援 奄美和光園

2025年03月18日

地域

第53回医療功労賞の中央表彰を受けた加納達雄医師(左)=17日、奄美市名瀬

過疎地域や離島、被災地などで地域住民の健康増進や病気の予防などに貢献した人を表彰する「第53回医療功労賞」(読売新聞主催、厚生労働省など後援)の中央表彰者がこのほど決まり、奄美市から医師の加納達雄さん(71)が選ばれた。2011年に同市名瀬の国立療養所・奄美和光園の園長に就任。ハンセン病元患者の思いに耳を傾け、医療体制や施設の整備などに尽力した。17日、受賞報告で奄美市役所を訪れた加納さんは「とても光栄なことで感謝している。奄美群島のために今後とも微力を尽くしたい」と語った。

 

医療功労賞は1972年に創設。今回は自治体の推薦を経て地方で選ばれた43人の中から、加納さんを含む10人が中央表彰を受け、14日に皇居・御所で天皇、皇后両陛下と面会した。

 

加納さんは1953年、徳之島町生まれ。大阪や奄美市名瀬などで過ごし、熊本大医学研究科を修了。94年から17年間、鹿屋市の国立療養所・星塚敬愛園で診療に当たり、内科医長や副園長を務めた。

 

奄美和光園では、2005年から循環器の診療援助を始め、星塚敬愛園との兼任副園長を経て、11年に奄美和光園の園長に就任した。

 

「療養所は暮らしの場」。入所者一人一人の言葉を聞き、施設のバリアフリー化や一般外来の受け入れ、農園開放や夏祭り開催による地域住民との交流の場づくりなどに取り組んだ。

 

同園は現在、入所者10人、平均年齢88・7歳。高齢化が進む中、元患者たちの声を映像などで記録し、教職員や保護者向けに人権問題に関する講演も続けている。

 

22年の定年退官後も特命副園長として勤めてきた加納さんだが、3月末で職務を退く。17日、加納さんから受賞報告を受けた安田壮平奄美市長は「先生の思いがしっかりと馬場まゆみ園長に受け継がれ、入所者の皆さまも引き続き安心して生活をなさっていることと思う。これからも奄美和光園の皆さまと一緒に歩んでいきたい」と述べた。

 

加納さんは「入所者の方に普通の生活を送ってほしい、その一心で療養所の中でも外でも同じような形で生活ができるよう努力してきた。今は馬場園長がしっかり守っており、療養所としてさらに良くなっていくはず」と期待。引き続きハンセン病問題への理解と支援を求めた。