手を振り、友や師と別れ 異動・進学で引っ越しピーク 奄美市の名瀬港

2023年03月30日

地域

鹿児島港へ向け出港する定期船と、多くの見送り人で溢れた名瀬港ターミナル=28日、奄美市名瀬

異動や進学に向けた引っ越しがピークを迎え、奄美市の名瀬港には連日、島を離れる知人や家族、恩師らを見送ろうと、多くの人々が訪れている。28日は同港からの乗客約150人を乗せたフェリーが鹿児島港へ向け出港。港のターミナルデッキは「またね」「がんばれ」などの声があふれ、見送りの人々は船の明かりが見えなくなるまで手を振り続け、大切な人との別れを惜しんだ。

 

ターミナルでは横断幕やのぼりを掲げた出発式や送別会が各所で行われ、校歌や別れの言葉を交わす人々の姿が見られた。マスクを外し、笑顔で記念撮影する姿も多くあった。

 

奄美高校から鹿屋工業高校へ異動する大冨将範教諭(45)は「8年の奄美赴任期間中、自然を満喫しようと家族で多くの場所を訪れたが、すべてを回ることはできなかった。奄美の魅力は尽きない。夢のような生活がきょう終わるのか、と信じられない思い。第二の故郷だと思っている」と涙を見せながら話した。

 

奄美市の朝日中を卒業した小牟田ひなさん(15)は家族と共に鹿児島市へ引っ越し。同中の吹奏楽部でいっしょに活動した櫛田アロハさんは「離れていても音楽でつながっている。高校でもひならしく輝いてね。みんなひなのことが大好きだよ」と送別の言葉を送った。小牟田さんは「楽しいこと、苦しいこと、島で学んだことがたくさんある。高校でもいい音楽をつくりあげ、みんなに届けたい」と感激した様子で話した。

 

新型コロナウイルスの感染対策緩和が進む一方、県は「安全確保が最優先」として事故防止のため岸壁の立ち入りを禁止。今年も船と港を無数の紙テープが結ぶ風景は見られず、岸壁からの見送りの復活を望む声も多く聞かれた。