泉芳朗の思想、人物像追う 間さん研究報告 奄美郷土研究会

2023年03月28日

地域

泉芳朗を中心に奄美の近代化について考えた例会=26日、奄美市名瀬

奄美郷土研究会(森絋道会長)の第374回例会が26日、奄美市名瀬の県立奄美図書館であった。会員の間(はざま)弘志さん(66)=奄美市名瀬=が「朧気(おぼろげ)なる昭和戦前~その光と影」と題して研究の一部を報告。大正から昭和にかけて活躍した詩人・政治家の泉芳朗を中心に、その思想や人物像、当時の出来事などから奄美群島の近代化と、米軍政下の市民らによる文化活動の源流を探った。

 

泉芳朗は1905年、徳之島の旧伊仙村生まれ。24年に鹿児島第二師範学校を卒業後、小学校で教職に就く傍ら詩作に励み、28年に上京。39年に帰郷して古里で終戦を迎えた。米軍統治下の奄美で奄美大島日本復帰協議会議長を務め、住民の署名運動や、5日間のハンガーストライキなどを展開。52年の旧名瀬市長就任後も復帰運動の中心的存在として奔走した。復帰後は国政に挑むも落選。59年4月9日、旅先の東京で病に倒れ54年の生涯を閉じた。

 

間さんは泉の作品と当時の出来事を照らし合わせて紹介。軍国主義化する社会情勢や、古い因習による住民らの反発、復協の内部分裂などに触れつつ、「泉芳朗はさまざまな壁にぶつかりながらも10代のころから半封建的姿勢を貫き、自由を追い求めたことが見えてくる。今後も調査を深めていきたい」と語った。

 

例会には会員ら約20人が出席。研究報告の後は意見交換があり、「奄美の日本復帰を語るとき、泉芳朗の国政落選をどうとらえるべきか」「民主主義の思想が奄美ではどう広がっていったのかを深堀りしてほしい」などの意見が出た。