浮き玉に「祈り・願い・想い」 阪神大震災から28年 喜界島の加島さん

2023年01月17日

地域

ウキアート制作者の加島さん(左)と友人の國重さん=5日、喜界町浦原

阪神淡路大震災から17日で28年。海岸に打ち上げられた漁具の浮き玉を使用して震災の記憶をつなげようと取り組んでいる男性が喜界町にいる。自身も神戸市で被災した同町嘉鈍在住の加島謙志さん(67)だ。メッセージやイラストなどをペイントした浮き玉を希望者にプレゼント。浮き玉には震災の記憶を風化させまいという思いが込められている。

 

神戸市で会社を経営していた加島さんだが、震災により大きなダメージを受けたという。借金の返済などを終え、親の介護のため2016年、喜界町に戻ってきた。

 

「ゴミリサイクルアート」と題して、島内の海岸に漂着するプラスチック製の浮き玉にキャラクターやメッセージなどを描き始めたのは昨年11月。関西に住む姉の助言を受け、「震災を忘れてはいけない」という思いや、犠牲者への追悼の念を浮き玉に込めて、多くの人に伝えることを決めた。これまでにプレゼントした浮き玉は約50個に上る。

 

自宅の玄関先に加島さんの作品を飾っている國重誠二さん(72)=同町浦原=さんも大阪で震災を経験した一人。加島さんの思いに共感し、制作を依頼した。加島さんは「1・17 祈り・願い・想い」とペイントした浮き玉を贈った。

 

震災当時について「自宅で下からドーンと突き上げるような感覚で目が覚めた。大きな横揺れとゴーッという音が聞こえ、命の危険を感じた。友人も多く亡くなり、建物が倒壊している景色が衝撃だった」と振り返る加島さん。

 

「あの日を忘れない、忘れさせないという思いで作った。このアートで人と人とのつながりもできている。この縁を大切にしたい」と話しており、今後もリサイクルアートを通じて震災の記憶継承に取り組んでいく。