研究者と地元交流の場へ 島嶼研奄美分室が改修 機能集約、拠点を強化 鹿児島大

2023年12月17日

地域

新設された多目的ルームを案内する高宮広士センター長(右)と受ける安田壮平市長(中央)=16日、奄美市名瀬

鹿児島大学は16日、同大学国際島嶼(とうしょ)教育研究センター奄美分室の改修竣工を記念した内覧会およびシンポジウムを、奄美市名瀬の同分室で開催した。内覧会で同センター長の高宮広土教授は「情報収集など地元の方たちが気軽に訪れ、身近な疑問や地域課題の解決に共に取り組むことができる場にしたい」と意欲を示した。

 

新設のセミナールームと多目的ルームの公開に加え、奄美群島で活動を展開する研究者5人が成果発表や概要説明を行った。大学関係者や地元住民など、内覧会に約50人、シンポジウムにはオンライン含め約80人が参加。活発な質疑応答も交わされた。

 

奄美分室は奄美群島における地域活性化の中核的拠点として教育や研究、社会貢献活動を推進し、地域課題の解決を図ることを目的に、2015年に旧名瀬保健所跡に開設。19年に大島紬会館6階へ移転した。

 

今年夏に改修工事を行い、多目的ルームとセミナールームを新設。奄美サテライト教室や奄美島嶼実験室など市内に分散していた機能を集約した。多目的ルームではサンプルのDNA抽出や分析の前準備などを行うほか、今後も機器を追加し研究の充実を図る。セミナールームでは勉強会などを開き、研究者と住民の交流の場としての活用を見込む。

 

シンポジウムではリュウキュウイノシシや徳之島の闘牛、島バナナなど身近な島の資源活用の可能性について研究報告があり、離島が優れた医学教育の場となっていることなども報告された。

 

奄美の自然環境は定説とされる「ヒトの移住による環境悪化や動物種の絶滅」に該当するデータが見られず、長期にわたり環境が維持されていることは世界的に見ても特筆すべきと強調された。

 

奄美分室の位置付けも改めて強調された。具体的には、島の自然を守る持続可能で長期的なモニタリングには、手法の簡易化や地域の協力が必要であるとして、住民参加型のモニタリング調査実施や研究者がそのデータに基づく調査結果を発表、地域で共有する場として奄美分室を活用していくことなどが示された。

セミナールームで行われたシンポジウムでは、奄美群島で活動を展開する研究者5人による講演があった=16日、奄美市名瀬