身近な戦跡巡る 親子で平和学習 古仁屋小家庭教育学級

2020年08月16日

地域

古仁屋小学校敷地内の旧奉安殿前で説明を受ける参加者ら=15日、瀬戸内町古仁屋

古仁屋小学校敷地内の旧奉安殿前で説明を受ける参加者ら=15日、瀬戸内町古仁屋

 身近な戦争遺跡を歩いて巡る親子体験学習が15日、瀬戸内町であった。古仁屋小学校の児童と保護者ら31人が参加。町教育委員会社会教育課の鼎丈太郎主査を講師に古仁屋市街地の戦跡3カ所を訪ね、町の歴史や戦時中の様子、平和の尊さについて親子で考えた。

 PTAで組織する古仁屋小学校家庭教育学級(藤井亜衣子学級長)主催。県立古仁屋高校の生徒2人もボランティアとして参加した。
 参加者は古仁屋小学校の敷地内にある旧奉安殿や、古仁屋高校が建つ旧陸軍の奄美大島要塞(ようさい)司令部跡、近くの高丘保育所に残る同司令部の壁跡などを巡った。

 古仁屋小学校の旧奉安殿は1929年ごろに建てられ、壁面には太平洋戦争時に米軍の機銃掃射を受けた際の弾痕が残っている。旧奉安殿は戦後全国的に撤去・破壊されたが、奄美群島には12カ所、瀬戸内町に6カ所現存しているという。

 同校では現在、卒業生のタイムカプセル保管庫などに利用されており、この日は特別に中が公開された。児童たちは漆喰(しっくい)で塗られた内部の様子を興味深そうに眺め、「学校にあったのにこれが何か知らなかった」「すごく頑丈そう」などと驚いていた。

 奄美大島要塞司令部は1923年に開庁。陸軍の中心施設として機能していたが戦況の悪化につれて1944年に閉鎖し、1945年3月の空襲で建物が焼失した。跡地には古仁屋高校が建てられ、司令部を囲っていた壁の一部だけが周辺に残っている。

 フィールドワークの後は町きゅら島交流館で町の戦争の歴史についてDVDで学び、最後は正午のサイレンに合わせて戦没者の慰霊と平和を祈念して黙とうをささげた。

 参加した児童からは「どうして日本は戦争をしたの」「何のために戦跡を残すの」などの質問が寄せられた。鼎主査は「戦争を経験した人が少なくなる中、戦跡はなぜ戦争が起こりどのような歴史があったのかを知る手掛かりになる。今日学んだことを基に自分で調べ、自分の考えを持ってほしい」と語り掛けた。

 瀬戸内町は国の補助事業で2014年度から16年度まで町内の戦跡の分布調査を実施し、200カ所以上を記録。17年度からは特に重要とみられる5カ所について追加調査を行っている。鼎主査によると21年度末までに報告書にまとめ、将来的に国指定史跡化を目指すという。