鳥獣被害3500万円 近年はクロウサギ、シカも 21年度奄美の農作物

2022年10月03日

地域

 県大島支庁農政普及課はこのほど、2021年度に奄美群島で発生した野生鳥獣による農作物被害状況(速報値)をまとめた。群島内での被害額総額は前年度比51%減の3531万6千円。全体の約6割を占めるイノシシ被害が大幅に減少した。一方、近年は奄美大島と徳之島だけに生息する希少種アマミノクロウサギや、シカによる被害も確認されており、県は今後も市町村など関係機関と連携しながら被害防止に向けた取り組みを進める。

 

群島内での被害額を鳥獣別にみると、イノシシが2064万7千円(前年度比57%減)で最多。次いでカラスが597万6千円(同14%増)、アマミノクロウサギが521万7千円(同15%増)と続いた。

 

鳥類被害は年度によって波があり、21年度は前年度比52%減の844万4千円。19年度、20年度は被害額が1千万円を超えたヒヨドリは同89%減の116万8千円だった。

 

被害額を品目別にみると、タンカンなどの「果樹」が1987万4千円(前年度比20%減)で最も多く全体の半数以上を占めた。次いで「サトウキビ」944万9千円(同66%減)、「野菜」305万9千円(同74%減)、「いも類」169万円(同71%減)、「飼料作物」107万1千円(同14%減)、「豆類」94万円(同1%減)、「その他」80万円(同67%減)だった。

 

被害が減少傾向であることについて、同課は「侵入防止柵設置など国の鳥獣被害防止対策事業や、奄美群島鳥獣被害防止対策推進会議による被害防止に向けた農家への啓発活動などが徐々に効果として表れている」と分析した。

 

一方、以前はほとんどなかったアマミノクロウサギによる果樹の幼木などへの食害が奄美大島や徳之島で確認されるようになり、大島支庁は17年度に環境省、鹿児島大学、市町村などで構成する「アマミノクロウサギ対策会議」を設立。侵入防止柵設置の留意点や、資材を活用した幼木保護など専用のマニュアル作成・周知などで、対策に取り組んでいる。

 

同課は「他の鳥獣などと異なり、天然記念物であるアマミノクロウサギは捕獲ができない。今後も被害状況を注視しつつ、環境省など関係機関と連携しながら農作物の被害防止に取り組みたい」としている。