ウニ漁解禁、今年も不漁か 種苗生産マニュアル作成 奄美群島

2023年07月02日

社会・経済 

シラヒゲウニ漁解禁も、採捕できるウニがいないため、人影のない奄美大島北部の海岸=1日、龍郷町

夏の味覚として親しまれてきたシラヒゲウニの漁が1日、解禁された。奄美大島では2017年以降、極端な不漁が続き、かつてはウニ漁をする人々で活気にあふれていた奄美大島北部の海岸に人の姿はなかった。漁は8

種苗生産実証試験で確保し、中間育成したウニ=6月22日、瀬戸内町の瀬戸内漁協

月末まで続くが、今年も不漁となる見通しだ。その一方、昨年は奄美で卵からふ化させ稚ウニを確保する種苗生産実証試験に初めて成功したという明るいニュースも。今年度は奄美群島の気候に適した種苗生産のマニュアル作成を進めるなど、数年後の資源回復に向け地元の漁業関係者も取り組み始めている。

 

シラヒゲウニは濃厚な甘味が特徴。名瀬漁協によると、管内のシラヒゲウニの水揚げ量は2015年に1537キロだったが、16年は508キロ、17年はわずか3キロに減少。18年以降はゼロとなり、近年は解禁日に奄美大島北部の海岸で風物詩となっていた、採捕したウニの殻を割る風景が見られなくなった。

 

奄美群島水産振興協議会(奄水協)は18年、県に協力を要請し、公益財団法人かごしま豊かな海づくり協会(垂水市)から提供を受けた稚ウニ(約10ミリ)の放流事業を展開。並行して20年度から、奄美群島振興開発事業(奄振事業)の交付金を活用し、奄水協から委託を受けた瀬戸内漁協が試験的な種苗生産に取り組んできた。

 

実証試験は大きさや形のそろった受精卵を使用して、水質や水温を一定に保ち、1回当たりの給餌量を調整するなど試行を重ね、昨年7月に通算13回目の試験で稚ウニの確保に成功した。稚ウニは大型の水槽で中間育成しており、大きいもので直径10センチ以上に成長した個体もある。

 

同漁協では今秋にも再度、昨年の成功時と同様の条件で実証試験を行い、年度内にマニュアルを作成する。種苗生産に使用する卵の大きさ、水質・水温を安定させる機材の使用方法、ふ化した幼生が稚ウニまで変態する過程に応じた飼育方法などを盛り込む見込みだ。

 

海づくり協会からの種苗提供は22年度に終了し、今年度以降に放流する稚ウニは地元で生産する必要がある。漁業関係者からは「海中で餌となる海藻が少ない。中間放流より藻場回復が必要だ」などの声もあり、取り組まなければならない課題が多い。

 

稚ウニの種苗生産は24年度以降、要望があった群島内の漁協へマニュアルを提供して取り組むことになる。だが、種苗生産や中間育成には相応の設備と人材確保が不可欠となる。奄水協の奥田忠廣会長は「漁協単位で設備を整えるのは厳しい。行政の支援が必要だ」と話した。