【にゅーす裏表】 卵高騰「それだけじゃない」 幅広く膨らむ経費、価格転嫁も 頭抱える飲食、洋菓子店

2023年04月16日

社会・経済 

卵料理のオムライスを提供する飲食店=15日、奄美市名瀬

長引く鶏卵の価格高騰・高止まりに伴い、飲食店で提供される卵料理の値上がりや内容変更が全国的に増えている。大手外食チェーンは卵を使った商品を販売休止するケースが急増。奄美でも卵をよく使う飲食店や洋菓子店などが対応を迫られる中、各店主からは「卵だけじゃなく、原材料全般が値上げ続き。経費ばかり膨らむ」との声が聞かれた。多くの店が、商品価格への転嫁は時間の問題だと頭を抱えている。

 

鶏卵・鶏卵加工品販売会社のJA全農たまごによると、全国的なMサイズ卵の価格相場は2018~22年、年間平均180~220円の範囲で年々上昇しながら推移。23年は1月280円台に始まり、3月までに340円を超えた。4月14日現在、名古屋では389円の値が付いている。

 

主な要因は不安定な国際情勢などを背景とした物価高騰。養鶏飼料や輸送に必要な燃料、プラスチック製の包装容器など幅広く値上がりが続いている。さらに昨秋以降、鳥インフルエンザの影響で採卵鶏を含む大規模な殺処分が進み、卵の供給不足も起きている。

 

こうした状況を受け、奄美群島にも店舗展開する大手外食チェーン「ジョイフル」は2月末以降、卵を多用するオムライスなど複数の商品の販売を休止。付け合わせの目玉焼きや生卵も別の食品に変更している。

 

奄美の飲食店も少なからず影響を受けている。定食や丼物をそろえる奄美市名瀬の「港湾食堂」は、朝食時間の営業を3月から休止している。卵や魚の値上がりに伴い、1食600円に占める原価(食材費)率が6割を超え、利益の確保が難しくなったためだ。

 

「かつ丼も使う卵を減らすことを考えたが、見栄えが悪くなる。商品の質は落とせない」。赤塚真二店長は経費抑制の限界を説明し「物価高騰に好景気が伴っていない。賃上げもままならない。むしろ商品価格の引き上げが避けられない現状だ」と肩を落とした。

 

「卵だけじゃない」。卵高騰の影響を取材する中で、各店主は異口同音にそう答えた。影響が大きい原材料の値上げ品目として、飲食店は油や小麦粉、洋菓子店は乳製品やナッツ類を挙げた。光熱費値上がりも重く、離島の宿命とも言える輸送コストも負担が増している。

 

安価な軽食や飲料が売りの「サンドイッチカフェ奄美」(同市名瀬)は昨年12月、油と小麦粉を多用する人気商品「フライドチキン」を発売当初比約1・5倍の140円に値上げ。山下和良社長は「初めて(チキンの)売り上げが落ちた」と影響を実感している。

 

ケーキなどを製造・販売する洋菓子店も、継続的に見込まれる物価高騰への懸念は強い。昨冬から段階的に商品価格を1割引き上げた「菓子工房フランドール」の泉真吾店長は「経営的にはもう少し引き上げたいが、消費者の負担を考えると難しい」と苦悩を語った。

 

「ケーキなど嗜好(しこう)品の売れ行きは景気に左右される」。夫婦で洋菓子店「ナナコ」(同市名瀬)を営む高田浩一店主は「商品価格に転嫁するのは最終手段。ずっと厳しい状況は続いているが、ギリギリまで経営努力でしのぎたい」と話した。

(西谷卓巳)