医師の声に広がる共鳴 奄美市議会、高校生も意見 血液備蓄所再設置問題

2024年03月19日

社会・経済 

血液備蓄所の再設置について、さまざまな観点から考察し発表した大島高校生=14日、奄美市名瀬の県立大島高校

日赤から委託され、輸血用の血液製剤を供給していた血液備蓄所が奄美大島から撤退し、緊急時に血液が届かなくなっている現状について、島内のさまざまな人々が声を上げ始めている。3月5、6日は奄美市議会で2議員が一般質問。14日には高校生が研究発表で取り上げた。奄美群島の医師たちが新聞紙上で備蓄所の再設置を求める意見を表明して5カ月。島内で共鳴の輪が広がっている。

       (柿美奈)

■市議らの声

 

「血液製剤の備蓄施設について、現在の進行状況をお尋ねする」。5日の奄美市議会一般質問で西忠男議員(チャレンジ奄美)が質問した。

 

市保健福祉部は「県や血液センターと供給体制検討会議を2021年から協議している」と進捗(しんちょく)状況を報告。市の方針として「市民の命を守るために血液備蓄所の再構築が必要」との姿勢を示した。

 

続く6日も永田清裕議員(自民新政会)が市の取り組みを質問。同部は「天候によっては供給がストップし、必要な時に必要な分を確保できない不安を抱える医師の声もいただいている」と述べ、「誰がどのように作るのか、検討会で協議していきたい」と回答した。

 

■県からの回答書

 

血液備蓄所の再設置に向けては、奄美選出の県議らも動いている。奄美群島が抱える課題の解決へ、1月には鹿児島市で「塩田康一知事への要望・意見交換会」を企画。血液備蓄所再設置を求める奄美市議会が、要望書を提出する橋渡し役としてサポートした。

 

要望に対して県は、2月末「(県として)血液の安定供給の責務を有する県赤十字血液センターに対し必要な対応を求めるとともに、関係機関と協議をしてきた」とし、「出張所の開設には人的・経費的な課題がある」と回答。「関係機関との協議を継続していく」と述べるにとどめた。

 

こうした状況を受け、奄美市議会で一般質問に立った西議員は「回答内容が振り出しに戻っている。奄美市全体のまとまりが薄いのでは」と指摘。永田議員は「どこの地域に住んでも安心して生活できる環境を確保することは国の務め。なんらかの活路を見いだしてほしい」と訴えた。

 

■高校生の問い掛け

 

高校生も医師らの声に反応した。3月14日、奄美市名瀬の県立大島高校で開かれた総合的な探究活動の発表で、2年生の原永然さん(17)と正野壮琉さん(17)は「奄美に血液備蓄所を再設置するには」と題して研究発表した。

 

2人は昨秋、大島郡医師会の新聞意見広告を見て、この問題に着目。昨年12月に県立大島病院を訪れ、院内に備蓄されている血液製剤の冷蔵庫を見たり、ブラッドローテーション(血液の返品再出庫)で使用される血液搬送冷蔵庫を実際に手にするなどして、医師らに質問を重ねた。

 

発表で2人は「備蓄所の再設置には島民の声が必要。まずは身近な人たちにこの問題を知ってほしい」と総括。発表を聞いた指導助言者の寺師敬子奄美看護福祉専門学校副校長は「着眼点がすごい。よく調べられている」と講評した。

 

奄美の現状について寺師副校長は、県立大島病院で総看護師長を務めた経験から「私たち市民も、今、病院で何が起こっているのか、自分たちにできることは何か、身近なところから考えていく必要がある」と話している。