普及進む「あかりんとん」 奄美市名瀬

2019年01月07日

社会・経済 

生後約10日の島豚を抱え笑顔の前田さん=2018年11月、奄美市名瀬浦上町の豚舎

生後約10日の島豚を抱え笑顔の前田さん=2018年11月、奄美市名瀬浦上町の豚舎

 奄美市名瀬の繁華街・屋仁川で「あかりんとんあります」の宣伝表示を見掛ける機会が増えている。あかりんとんは奄美産のオリジナルブランド黒豚で、繊維がきめ細かくしっとり柔らかい肉質が特長。事業を展開する㈱カイセイ(同市名瀬)の総務部長、前田あかりさんは自らの名を冠したブランドに対し「養豚は建設業以上の男社会だが、女性の感性を大切に事業を進めたい」と意欲を見せる。

 

 前田さんは名瀬出身。長崎短大卒業後、建設業に従事してきた。養豚を手掛け始めたのは2012年。現在、名瀬浦上町山中の豚舎で餌や生育環境の清潔さにこだわりながら約600頭を飼育している。

 

 県内では既に鹿児島黒豚のブランドが確立している中での挑戦。同社も、と殺と加工は県本土で行い奄美に再度持ち込む逆輸入の形を取る。

 

あかりんとんを使用した島豚ロースのロースト

あかりんとんを使用した島豚ロースのロースト

 前田さんは「もうかる業種ではない。私たちが始めてからも同業2社が豚舎を畳んだ。事業として次世代に引き継げるよう踏ん張りたい」と話す。

 

 島内であかりんとんを手広く扱う同市のグリーンストアの精肉部バイヤー里武久さん(63)は「観光客が土産用に真空パックの商品を買っていく姿も目立つ。奄美特産というイメージは売る側、買う側双方にありがたい。島豚全体の品質アップにつながってほしい」と波及効果に期待する。

 

 あかりんとんは現在、月40頭の出荷。「今の2倍の供給を目指す。将来は奄美でと殺、加工ができる体制も必要」と構想を語る前田さん。「奄美の家庭で『きょうはあかりんとん食べよう』なんて会話が出てくるようになればうれしいですね」と笑顔を見せた。