生命の地域格差解消へ 与論町で医療講演

2023年01月25日

社会・経済 

南西諸島の航空医療充実に向け、2人の医師と島民との意見交換もあった講演会=21日、与論町地域福祉センター

「空から離島を救う」と題した航空医療に関する講演会(島想会主催)が21日、与論町地域福祉センターであった。県立大島病院救命救急センター長の中村健太郎医師、沖縄・浦添総合病院救命救急センター長の米盛輝武医師がそれぞれ講演。島民約140人が参加し、生命の地域格差をなくすため、南西諸島の航空医療充実に向けた課題を共有した。両医師はドクターヘリ(ドクヘリ)だけではカバーしきれない同地域の多岐にわたる航空医療ニーズを指摘。ドクヘリや消防防災ヘリ適応外事案に対応する多目的ヘリ導入などを提言した。

 

中村医師はインターネットを介してリモートで講演した。奄美ドクヘリの運用状況や運航時間が日中に限られるなどの課題を説明。夜間などの急患搬送を担っていた海上自衛隊鹿屋航空基地の救難ヘリ除籍による奄美への影響を懸念し、「ドクヘリだけでは群島の航空医療はカバーできない。同救難ヘリ除籍を航空医療を見直すきっかけにし、自治体、群島の皆さんに立ち上がっていただくことが重要」とした。

 

米盛医師も「奄美と沖縄のドクヘリ配備だけでは南西諸島エリアのカバーは困難」と指摘。「県境にとらわれない多機関航空機運用が必要」とし、ドクヘリや消防防災ヘリの適応外事案で運航できる多目的ヘリの導入や遠距離の患者搬送に適した固定翼機の必要性、各離島の航空機受け入れ体制整備などを訴えた。

 

講演後は意見交換会があった。会場からは、奄美ドクヘリの運用開始以降、与論島民が沖縄での医療を受けづらくなっていたとして、「住民の命と利便性を考えず、行政側の勝手な判断でこういう結果を招いたと考えている」との批判も。「ヘリを要請した場合、費用はいくらかかるのか」「より早く救急要請できる体制にできないか」などの質問もあった。