識者「古くても需要ある」 放置予防へ行政措置推進 空き家対策、進む法改正

2024年03月30日

社会・経済 

古い木造家屋を安く借りて修繕したNPO法人「あまみ空き家ラボ」の事務所=2月15日、龍郷町円

空き家対策促進を目的とした法制度整備が加速している。高齢化や人口減少を背景に増える空き家は適正に登記・相続されていない場合も多く、所有者不明(不在)家屋の未活用や腐朽・損壊が各地で問題となっている。そうした中、2023年12月施行の改正空き家対策特別措置法は所有者による家屋の適正管理を推進し、行政措置が講じられる空き家の対象範囲を拡大。24年4月からは相続登記が義務となり、空き家放置予防への効果が期待される。有識者は「古くても賃借需要はある」と空き家所有者らの背中を押す。

 

奄美市は23年8月、名瀬市街地で放置され倒壊寸前の空き家1棟を強制解体した。所有者(住人)の死後、相続放棄されていた家屋。17年以降、近隣から市へ苦情が相次ぎ、22年の専門家による調査では「いつ倒壊してもおかしくない」と指摘されていた。

 

所有者不明家屋対象の略式代執行としては県内初。私財管理への行政介入とあり、市は関係者への連絡や措置の検討を慎重に進めたが、最終的には「危険性の排除」を優先。市空き家等対策協議会でも「近隣の不安は計り知れない。迅速な対応を」と意見があった。

 

「所有者が特定できない」「登記、相続されていない」「管理する意識が低い」―。空き家対策に関して各自治体が直面する課題は同じ。腐朽・損壊した空き家の解体・修繕による活用促進へ向けて、所有者側の動機付けにつながる法制度が必要と訴える声が多い。

 

23年12月施行の改正空き家対策法は、倒壊リスクが高まった「特定空き家」の解消促進と前段階「管理不全空き家」に対する行政措置の円滑化が目的。所有者の責務強化や官民連携を明文化し、管理不全空き家の固定資産税減免(住宅用地特例)解除も定める。

 

24年4月の相続登記義務化は所有者不明土地の解消が目的。相続人は不動産の取得を知った日から3年以内に登記の名義変更手続きを完了させる必要がある。正当な理由なく相続登記を怠れば10万円以下の過料が科される可能性もある。

 

「税金や罰金が絡むことで、空き家所有者からの問い合わせは増えた」とある自治体の担当者。改正奄美群島振興開発特別措置法も移住促進の一環で空き家活用支援を打ち出しており、空き家所有者側の意識とともに行政(特に自治体)の積極的な関与が鍵を握る。

 

自治体や関連分野の専門家らと連携して空き家活用に取り組むNPO法人「あまみ空き家ラボ」は、不動産市場や空き家バンク制度では流通しにくい物件の貸借を仲介するサブリース事業を展開。権利関係の調査を行いつつ、家屋の修繕は賃借人に任せる仕組みだ。

 

同法人の佐藤理江理事長自身も解体予定だった古い木造平屋(龍郷町円)を格安で借り、独自の修繕(DIY)を重ねて現事務所に仕上げた。「古い木造家屋は構造が単純で資材も安い。素人がDIYしやすく、そうした需要は高い」と空き地が少ない地域の住居確保策として期待を語った。