豪雨災害に備え連携訓練 土砂で道路寸断想定、海上搬送 奄美海保など10機関

2023年05月17日

社会・経済 

巡視船「あまぎ」で名瀬港から搬送した陸自の偵察用バイクを、古仁屋漁港の岸壁に降ろす海保職員ら=16日、瀬戸内町古仁屋

奄美海上保安部は16日、豪雨災害に備え、奄美市の名瀬港から瀬戸内町の古仁屋漁港まで、巡視船「あまぎ」による合同海上搬送訓練を実施した。奄美海保をはじめ、陸上自衛隊や消防、警察、行政、九州電力送配電など計10機関から約70人が参加。土砂による陸路寸断を想定し、偵察用バイクや電力復旧機材、救助用資器材などの海上搬送と、巡視船から自衛隊給水車への給水支援など一連の流れを確認した。

 

訓練は、災害対策基本法と各機関で締結されている協定に基づき、実施した。奄美海保が主体となり、多数の機関と合同で海上搬送訓練を行うのは初めて。

 

台風接近に伴う豪雨によって名瀬と瀬戸内町の間で土砂崩れが発生し、道路の寸断やライフラインの遮断があり、瀬戸内町から県を通じて奄美海保に協力要請があったと想定。各機関は被害状況が分からないケースも想定し、海上で搬送する資機材や人員を選定した。

 

巡視船搭載のクレーンを使い、偵察用バイクや変圧器などの積み降ろし作業、担架などの救助用資器材の搬入、搬出作業も行った。古仁屋漁港では、巡視船の飲料水タンクから約1トンの水を陸自給水車へ給水した。

 

奄美海保の樋口則一部長は「災害発生時には、本土からの応援到着まで時間を要する。島内に現存する各機関が一致団結することが重要」と連携の必要性を強調した。

 

大島地区消防組合消防本部の伊集院正次長兼名瀬消防署長は「夜間であれば野営テントの搬送や、災害現場までの移動手段の確保も必要。さらなる想定、準備を検討したい」と訓練を通じて得た課題を話した。

 

陸自奄美警備隊の松田直樹1等陸尉は「想定よりもスムーズに進み、他機関と連携する貴重な経験となった。今後も非常時に備え、円滑に対応できるよう連携を深めていきたい」と話した。

 

土砂崩れによる陸路遮断は、2010年の奄美豪雨時には奄美大島の各地で発生。その後も集落が孤立する事例があり、陸路以外での物資搬送やライフラインの復旧策が課題となった。