養殖技術の進展に期待 瀬戸内町、近大水産研に新管理棟

2022年05月18日

社会・経済 

3月に完成し、竣工式典があった近畿大学水産研究所奄美実験場の新管理棟=17日、瀬戸内町花天

近畿大学が瀬戸内町花天で運営する同大学水産研究所奄美実験場の新管理棟竣工(しゅんこう)式典が17日、現地であった。老朽化が進んでいた旧管理棟を移転新築し、機能を拡充した。式典には大学や町などから関係者約20人が出席し、同実験場で養殖するクロマグロの質、量の向上や養殖技術の進展、ハタ科魚類の品種改良など、さらなる生産機能向上に期待を寄せた。

 

同実験場は2001年開設。02年には大学の研究施設として世界で初めてクロマグロの完全養殖に成功した。年間を通して海水温が20度を下回ることのない大島海峡の環境を生かし、採卵拠点として重要な役割を果たしている。

 

カンパチやクエ、マダイなど魚種5種類の生産事業のほか、クエとタマカイの交雑魚「クエタマ」などハタ科魚類の品種改良研究などにも取り組んでいる。

 

管理棟の建て替え費用は約1億1千万円。21年7月に着工し、今年3月に完成。新施設は鉄骨造平屋建てで、延べ床面積は429・59平方メートルほか、実習や研究に訪れる学生・共同研究者のため宿泊部屋やミーティング室、食堂などを備える。

 

同水産研究所の升間主計所長(68)は式典で「新管理棟には学生らの研究に必要な機能を整備していただいた。クロマグロの成熟、産卵に国内で最も適した奄美の環境を生かし、研究に取り組む」とあいさつ。

 

同町の鎌田愛人町長は「新管理棟の完成で、一層の研究、生産事業を推進できると期待している」と述べた。

 

新管理棟は実験設備や宿泊設備の整備を進め、6月末にも供用を開始する。奄美実験場では今後、実験場で扱う魚種のDNA研究を進め、品種改良による魚種の開発を進めていくとしている。