上陸・産卵とも減少 ウミガメ 「引き続き注視を」 県保護対策連絡協
2024年05月30日
自然・気象
県ウミガメ保護対策連絡協議会(事務局・鹿児島県自然保護課)の会合が29日、オンラインで開かれた。県内の自治体担当者や研究者など26機関41人が参加し、2023年度の実績と24年度の事業計画などを報告した。23年度のウミガメ上陸回数は県全体で4434回(前年度比1796回減)、産卵回数は2131回(同1041回減)と減少。県は「年によって増減の幅が大きく、今後も注視していく必要がある」としている。
ウミガメ上陸・産卵数の調査対象は海岸のある県内39市町村で、市町村が委嘱したウミガメ保護監視員らが保護監視活動に併せて4~9月に調査する。23年度は28市町村で上陸を確認。上陸と産卵が最も多く確認されたのは屋久島町で、上陸2703回(前年度比877回減)、産卵1106回(同507回減)だった。
奄美群島12市町村の確認状況は上陸863回(同265回減)、産卵595回(同118回減)。市町村別確認状況は、上陸が多い順に与論町346回、瀬戸内町121回、奄美市114回、龍郷町85回、和泊町57回など。産卵は与論町204回、奄美市91回、瀬戸内町90回、和泊町48回、龍郷町43回などと続いた。
過去15年間の推移をみると、県内での上陸・産卵確認数は08年度が上陸9443回、産卵5415回でいずれも最多。県自然保護課の川瀬翼課長は「上陸・産卵数は年によって変動が大きいが、原因は明らかになっていない。引き続き注視していく必要がある」と述べた。
意見交換では、一部の産卵地で行われているふ化したばかりの子ガメの放流事業に関する議論があった。児童生徒らの教育活動としての効果が挙がった一方、日中の放流で子ガメの生存率が著しく低下することなどが指摘され、環境教育の在り方について課題が示された。
関係団体の活動報告では、日本ウミガメ協議会の松沢慶将会長が国内のウミガメ保護活動の特徴や課題について発表。▽5種類のウミガメが日本に来遊し、うち3種が産卵する▽特にアカウミガメは北太平洋の重要な産卵地である▽1950年ごろから国内各地で独自に保護調査が始まった▽アカウミガメの産卵は過去70年に渡り減少傾向―などと説明した。
また、雌のアカウミガメが成熟するのに約40年かかると述べ、「保護の成果が出るまでに時間がかかるが、産卵地での卵や雌の保護は確実に効果がある。産卵環境の保全や混獲対策が今後の課題だ」と語った。解剖などで確認できたウミガメの死亡例ではプラスチックごみなどの誤食は少なく、混獲による溺死が多いとして、ウミガメを傷付けない漁具の開発が行われていることも紹介された。