サンゴ白化、緩やかに回復へ 奄美大島、台風接近で海水温低下

2022年10月15日

自然・気象

白化によって一部で死滅も確認されたサンゴ=1日、奄美市名瀬の大浜海岸(興克樹さん撮影)

奄美海洋生物研究会(興克樹会長)は11日、今年夏の海水温の上昇に伴い、奄美大島で確認されたサンゴの白化現象の調査結果(速報)を発表した。奄美市名瀬の大浜海岸の礁池内など、島内の一部で白化による死滅が確認された。9月の台風接近で海水温が低下し、被害の拡大は抑えられたという。興会長は「今後は緩やかに回復に向かう群体が多いだろう」と見通しを述べた。

 

サンゴの白化は、共生する褐虫藻という藻類が失われることでサンゴの白い骨格が透けて見える現象。海水温の変化や強い日差しなどのストレスによって発生する。長期化すればサンゴは栄養分を得られず死滅する。

 

同研究会によると、8月に大浜、神の子(奄美市笠利町)、節田(同)の海岸3カ所で白化が確認された。いずれも海水温が上昇しやすく、日差しの影響も受けやすい水深2㍍以内の礁池内で発生していた。

 

白化の確認を受けて、奄美群島サンゴ礁保全対策協議会と同研究会などは9月28日から10月8日にかけて、奄美大島全域でモニタリング調査を実施。調査した48地点のうち、13地点で白化による死滅が確認された。

 

特に大浜と、大浜北側の摺子崎の礁池では、ほぼ全ての群体で白化が確認され、大浜で全体の約2割、摺子崎で約3割に上る卓状や樹枝状のミドリイシ属が死滅した。

 

奄美市笠利町の節田、用安の礁縁でも白化によって約1~2割が死滅した。用安と神の子の礁池では白化が確認されたが、死滅した群体はほとんどなかった。瀬戸内町の大島海峡は海水温が比較的低く、白化による死滅はみられなかった。

 

興会長は「今年の夏は各地で平年よりも海水温が高かったが、9月の台風12号、14号の接近で低下した。大規模な白化が発生した2017年に比べると影響は少ない」と分析。「地域ごとに受けるダメージは違う。保全のために、モニタリングをしてデータを蓄積することが重要だ」と話した。