世界遺産登録で村花除去へ 宇検村  

2019年07月13日

宇検村の村道湯湾大棚線に生育するハイビスカス(ブッソウゲ)=11日、宇検村

宇検村の村道湯湾大棚線に生育するハイビスカス(ブッソウゲ)=11日、宇検村

 世界自然遺産登録に向けて、宇検村は村花に指定しているハイビスカス(ブッソウゲ)の伐採に乗り出す。ブッソウゲが外来種にあたるため。今年、環境省などからの指摘も受け、村は湯湾岳(標高694㍍)につながる村道・湯湾大棚線沿い約3㌔の820本余りを伐採する。

 

 ハイビスカスはアオイ科フヨウ属の学名の総称。そのうち、ブッソウゲの原産地は南中国、マレーシア、インドなどといわれている。南国のイメージを象徴する花として沖縄や奄美で広く植えられ、土産品やパンフレットのデザインにも用いられている。

 

 宇検村によると、ブッソウゲは村内にも多く見られることから、1986年11月1日に村花に指定した。翌87年に制定した村民歌に「花咲き匂う/赤土は/ハイビスカスの/並木路」などと歌われている。

 

 歌詞にもあるように、赤土山から村入り口にかけての県道85号線沿いは別名ハイビスカスロードと呼ばれる。村民によると、40年ほど前には植樹祭が開かれ、村民が植樹した。

 

 状況が変わり始めたのは世界自然遺産登録が延期となった昨年ごろから。特別な保護が必要となる第1種と第2種特別地域にあたる村道・湯湾大棚線に、大量のハイビスカスが植樹されていたことが関係者から指摘された。指摘ではハイビスカスは本来奄美大島には生息していなかった外来種。世界自然遺産登録をめざす奄美古来の森の形にそぐわないという。

 

 湯湾岳は世界自然遺産登録を目指す奄美・沖縄の中でも最高峰のでシンボル的存在。宇検村の元山公知村長は「そこに外来種があることで登録の足かせになるのは良くない」と決断した。今月19日に、職員らで湯湾岳につながる村道沿いの823本の伐採を行う。

 

 元山村長は「村民はハイビスカスのことを『湯湾花』と呼ぶほど、広く親しんできた花。仕方がないが、奄美・沖縄全体の取り組みに協力したい」と話す。

 

 外来種を村花や村民歌に指定することについては「先人たちの思いや考えがあって決めたこと。その思いまでも『伐採』することはできない。このような時代の流れや歴史も踏まえて今の宇検村がある。今後の取り組みを村民で議論していきたい」と話している。