島々の地域づくり事業協組② 与論ファンの移住後押し ヨロン
2024年07月01日
特集
ヨロンまちづくり協同組合は2022年4月1日、与論町内7事業者で設立。5月20日付で特定地域づくり事業協同組合(特地事業協組)として知事認定を受けた。設立時の事業者職種はサトウキビ収穫のハーベスター組合4、介護事業所1、スーパー1、宿泊施設1。
結成キーパーソンは代表理事の川畑力さん(44)。会員事業者・介護老人保健施設「風花苑」の理事長。島の働き手不足を実感していた20年、鹿児島県中小企業団体中央会の会報で、制度創設を知り、情報を仕入れ、総務省のオンラインセミナーを聴講。町と県中央会の担当者からサポートを受けながら結成準備を進めた。
組合員は町内事業者を対象に複数回説明会を開き、個別訪問などで募った。派遣職員の採用第1号は沖永良部の事例を参考に試みた移住サービスサイトを通じて。初年度は採用4人。今年5月末現在、在籍職員7人。組合員事業者は、入れ替わりもあったが9事業者に増えた。この間、ハレルヤ子ども園とスポーツ・文化活動のNPO法人ヨロンSC、総合リゾート・プリシアが加わるなどした。
川畑さんによると、組合員事業者の従業員らから、移住者の未経験分野への就労を懸念する声もあったが、次第に聞かなくなった。「若い人が来てくれて助かった」「実践力のある人が来てくれている」といった反応が届いているという。
与論の場合、与論ファンが特地事業協組という新しい窓口を利用して、移住に踏み切ったという例が目立つ。実働2年で延べ14人を採用。現職員や家族を含め30代を中心に16人が定住している。
風花苑で働く杉町恵美子さん(62)は長野県安曇野市から昨年12月移住した。「20年前に来島していい所だと思い、昨年4月にも来島した。コミュニティーとか人が素晴らしくて、働きながら自力で暮らしたいと思った」
組合の存在を知り、問い合わせ、シェアハウスを紹介され移住。最初はハーベスターのオペレーター補助。慣れない仕事で体調を崩したこともあったが、生活を通し、自然と島暮らしになじんできた。「いずれは長野の夫も呼んで一緒に暮らしたい。娘2人も与論に里帰りするような形になればうれしい」
ヨロンSCの佐藤真澄さん(59)はウインド・サーフィンが趣味で、「いつかは住みたい」と思いながら通っていた20年来の与論ファン。この春、東京から移住してきた。「島の知り合いと電話していて、組合の話が出て、つながった。仕事があり、組合を通じて住むところも見つかった。迷いはあったが、いい機会だと思った。仕事を含め、人との出会いも楽しんでいる」
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島内で2店舗展開するスーパー・トップの代表取締役社長、志摩晴文さん(69)は組合発起人の一人。5、6年前から「求人」の張り紙に全く反応がなくなっていたという。理由の一つと思われるのが子牛価格の上昇。もともと家族営農だったが、子どもや奥さんは兼業という家が多かった。子牛価格の上昇で、規模拡大による一家での専業化が進んだという。
「どうやりくりしようかと思案し続けていた所に組合の話が持ち上がった。やって良かったと思っている。人繰りはどこも大変。うちの場合、組合があることで週数日、1日数時間でも対応してくれる人を確保できる。それでだいぶ助かっている」
ただ今後、状況はさらに厳しくなると見通す。「組合にはもっと大きくなってもらいたいが、受け入れるのは大変だろう。町が一体になって人材確保に力を注がなければ、島のいろんなことが回らなくなるだろう」