「夜の自然と観光」課題探る 奄美市でシンポジウム
2020年02月02日
「奄美大島の夜の自然と観光」をテーマにしたシンポジウム(環境省主催)が1日、奄美市名瀬の集宴会施設であった。専門家の講演や地元関係者を交えたパネルディスカッションがあり、夜間にアマミノクロウサギなどを観察するナイトツアーの現状や課題を探った。世界自然遺産登録を見据えた観光客の増加に伴い、利用が集中するエリアでの野生生物への影響やガイド同士のトラブルを懸念する声が相次ぎ、一般住民を含めた「共通ルールが必要」という提案があった。
国立環境研究所研究員の久保雄広さんが「シマの持続可能な観光を考える│野生動物の保全と利用」と題して講演。奄美大島を訪れた観光客を対象に実施したアンケートの結果を基に、ナイトツアーに興味のある人は6割を超えるが、参加者は約1割にとどまると説明。
環境保全と地域振興が両立する「持続可能な観光」の確立に向けて、増加する観光客の受け皿や情報の不足を課題に挙げた。
パネルディスカッションは、奄美群島国立公園管理事務所の千葉康人世界自然遺産調整専門官がナイトツアーで人気が高まる三太郎峠(奄美市住用町)の現状を報告し、喜島浩介さん(奄美大島エコツアーガイド連絡協議会会長)、常田守さん(自然写真家)、山下茂一さん(住用町市地区区長)を交えて意見交換した。
パネリストから、ナイトツアーが集中する時間帯にクロウサギの出現が少なくなっていることや、野生生物のロードキルの発生、他の車を追い越したりするガイドのマナーの問題などについて指摘があり、「観光の前に保護が大事」「厳しく規制すべき」という意見があった。
千葉専門官は「特定のところに利用が集中している。守るべきところは守ることが必要。関係者の合意を得て地元の人も含めたルールを広めていかないといけない」とまとめた。