「自然共生サイト」に認定 瀬戸内町の大島海峡 官民一体の保全活動など評価
2024年11月29日
環境省が民間の取り組みなどによって生物多様性の保全が図られている区域を認定する「自然共生サイト」の発表がこのほどあり、県内から瀬戸内町の「ネリヤカナヤの海」が認定を受けた。同町の大島海峡で町と漁業者、住民らが協力して取り組むマングローブ林やサンゴ礁、藻場、ウミガメ産卵地の保全・再生事業が評価された。認定証授与式が28日、古仁屋の同町役場であり、鎌田愛人町長は「豊かな海は町民の誇り。責任を持って次世代へ引き継ぎたい」と語った。
自然共生サイトは、2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として保全する国際目標「30by30(サーティーバイサーティー)」の実現に向け、環境省が23年度から実施している制度。全国の企業・団体・個人や自治体から申請を受け付け、有識者の審査を経て認定する。県内では4例目で、奄美関係では昨年、龍郷町の「真米(まぐむ)の里 秋名・幾里・大勝」と同町久場の「アマミノクロウサギ・トラスト3号地」がそれぞれ認定を受けた。
「ネリヤカナヤの海」は奄美に伝わる海のかなたの理想郷にちなみ、豊かな自然環境を未来につなぐとの意志を込めて命名。主に白浜、諸数、小名瀬、デリキョンマ崎、安脚場、西阿室の6カ所で、町や地元漁協が中心となってマングローブの植林やサンゴの保全、藻場再生、ウミガメ産卵地の海岸清掃などに取り組んでいる。
授与式で環境省奄美群島国立公園管理事務所の広野行男所長から認定証を受け取った瀬戸内漁協の茂野拓真組合長は、「生物多様性を守るため力を貸してくれた多くの方々に感謝している。これからも豊かな海峡を未来に残せるよう協力して取り組んでいく」と決意を新たにした。
授与式の後は同町小名瀬の干潟に移動。海洋生態系の働きで二酸化炭素を吸収する「ブルーカーボン」の造成を目指し、地元の児童生徒や高校生と共に22年度から取り組んでいるマングローブ林の再生地を視察した。同地では既存のメヒルギの種から苗を育て、これまでに約900本を植樹している。
同行した広野所長は「まだ小さなマングローブだが、生態系が構築され豊かな環境が再生されることを期待している。地元が主体となって生物多様性を守る動きが今後も波及していけばうれしい」と話した。