クロウサギの食害防げ 鹿大が侵入防止柵実験 徳之島町

2023年11月15日

タンカン畑に電気柵を設置する鹿児島大の髙山耕二准教授(右)ら=10日、徳之島町母間

鹿児島大学農学部の髙山耕二准教授らは10日、研究の一環で徳之島町のタンカン農園に野生動物の侵入を防ぐ電気柵を設置した。動物の学習能力を利用して作物に近付かなくさせるもので、近年増加する国の特別天然記念物アマミノクロウサギによる食害防止が目的。髙山准教授は「クロウサギを農家の敵にせず、共存しながら状況に合った効果的な対策が取れるようにしていきたい」と語った。

 

世界自然遺産登録地の奄美大島と徳之島の一部地域では、2017年ごろから特産品のタンカンの木へのアマミノクロウサギの食害が頻発。樹皮や枝先をかじられたり、よじ登られて枝を折られたりした木は樹勢が弱り、枯れることもあるという。

 

徳之島町母間でタンカン農園を営む吉本勝太さん(70)は「捕まえるわけにもいかず、農家はほとんど泣き寝入りになる。タンカンだけでなく、サトウキビやジャガイモでも被害があるようだ」と話した。

 

タンカンの枝をかじるアマミノクロウサギ(提供写真)

農地への柵の設置は、アマミノクロウサギと人間の共存を目指す鹿大の研究プロジェクトの一環。10日は農学部農業生産科学科の学生4人が参加し、吉本さんのタンカン畑の周囲延べ約700メートルにわたって電気柵を設置した。

 

柵に触れると約1万分の1秒という短い時間、強い電気が流れる。健康に害はないが、痛みを学習したクロウサギは柵に近付かなくなるという。電力は太陽光パネルで賄う。

 

髙山准教授は「電気柵は下草の管理などが必要だが、作物を選ばず設置でき、必要に応じて移動できるという利点がある。利用できる選択肢を増やし、必要な方法を選んでもらえるようにしたい」と話した。