リュウキュウアユ 存続危機
2019年08月20日
奄美大島だけに天然の個体が残るリュウキュウアユについて、奄美リュウキュウアユ保全研究会(会長・四宮明彦元鹿児島大学教授)は18日、今春の遡上(そじょう)期の調査で激減し、存続が懸念されていた同島の河内川で再調査を行った。確認した個体数は前回の31匹から177匹に増加したものの、例年を大きく下回っている。四宮会長は「厳しいことに変わりはない。しっかり見守っていく必要がある」と述べた。
アユの調査は毎年、稚魚が海から川へ上る春と、繁殖期を迎えた成魚が産卵のため川の下流に集まる秋に実施している。今春は5月中旬の2日間、島内14河川で調査を行った結果、計3499匹を確認。前年(5万6733匹)から激減し、春の調査を開始した2006年以降で最少だった。
主要な4河川の確認数は▽役勝川1639匹▽川内川50匹▽住用川1710匹▽河内川31匹。全ての河川で著しく減少しており、同研究会は地球温暖化による海水温の上昇によって、稚魚の生存率が低下したとみている。
同研究会によると、同島のアユは太平洋側と東シナ海側で遺伝子が異なり、特に奄美市住用町から宇検村の焼内湾に注ぐ河内川に生息するアユについては、東シナ海側の唯一の個体群であるため、激減によって「貴重な遺伝子を持つアユが消滅する可能性が高い」と指摘。遡上した稚魚の数を再確認するため、再び調査を行った。
河内川で近年、春の調査で確認されている個体数は500~2500匹ほどで推移。今年は例年より遡上が遅れたため、春の確認数は少なかったとみられる。同研究会の久米元・鹿児島大学准教授は「5月の調査では異常に数が少なく、今年で絶滅するのではないかと危機感を持った」と述べ、再調査の結果を受けて「すぐにいなくなることはない。当面は個体群を維持できるだろう」と考察した。
四宮会長は「最悪の状態でないことは確認できた。他の動物による捕食やけがなどによる死滅で秋には6、7割に数が減る。カワウが多く、捕食被害が心配されるが、頑張って再生産してくれることを願う」と期待を示した。