リュウキュウアユ2万匹台に回復
2018年12月16日
奄美リュウキュウアユ保全研究会(会長・四宮明彦元鹿児島大学教授)は15日、奄美市住用町のマングローブパークで学術検討会を開いた。奄美大島だけに天然の個体が残るリュウキュウアユの調査報告があり、今秋の確認数は2万962匹と、大幅な減少が懸念された前年(4430匹)から2万匹台に回復した。四宮会長は「いい条件が続いてある程度は元の水準に戻った。今後も見守っていく必要がある」と述べた。
アユの調査は毎年、稚魚が海から川へ上る春と、繁殖期を迎えた成魚が川の下流に集まる秋に、鹿児島大学と琉球大学などが合同で実施している。今秋は11月17、18の両日に調査を実施した。
主要な4河川別の確認数は、最も多い役勝川が前年の1688匹から約8千匹増の9520匹に上ったほか、▽川内川5884匹(前年1402匹)▽住用川2742匹(同550匹)▽河内川676匹(同258匹)―といずれも大幅に増えた。近年アユが復活しつつある戸口川では679匹(前年13匹)を確認した。
報告した久米元・鹿児島大学准教授は増加の要因に、冬の海水温が低かったことや夏の適度な降水量など、アユの生息環境が好条件だったことを挙げた。
四宮会長は住用川で水害の再発防止を目的に進む改修工事について、支流との合流部の拡幅によって水量が増え、下流側のアユの産卵場に影響する恐れがあると指摘。「今後の影響をしっかり見て、産卵場を守るために予防策を提言する必要がある」と話した。
リュウキュウアユの天然個体は沖縄本島にもいたが、急速な開発などに伴う生息環境の悪化で1970年代に絶滅し、奄美大島の個体を利用して定着を図っている。奄美大島でも赤土流出などで生息数が減り、環境省のレッドリストで絶滅危惧ⅠA類。県は条例で希少種に指定して保護している。
同研究会の調査では、奄美大島では90年代前半には3万匹前後が確認されたが、98年に2569匹に落ち込み、以降は数千~1万匹台で推移。2012年から増加傾向がみられ、15年には過去最多の8万匹超を記録。一方、17年は98年以来19年ぶりに5千匹を下回り、過去5番目に少ない水準となった。