世界自然遺産科学委作業部会 天城町
2019年08月07日
世界自然遺産
「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」世界自然遺産候補地科学委員会の奄美作業部会(座長・米田健鹿児島大学名誉教授、委員8人)が6日、天城町防災センターであり、遺産推薦地の保全状況について科学的な評価を行い、管理に活用するモニタリング計画案について協議があった。委員から「地元の研究者や愛好家がたくさんいる。実際に森に入って見ている情報を吸い上げ、活用する体制を充実してほしい」との提言があった。
モニタリング計画の策定は、自然遺産候補地の奄美・沖縄について、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関・国際自然保護連合(IUCN)が昨年5月に「登録延期」を勧告した際に指摘した課題の一つ。
計画案では、固有種・絶滅危惧種の保全状況や人為的影響、外来種の生息・生育状況、観光利用の状況と環境負荷など5項目について、地域ごとに具体的な計21の指標を設け、調査項目や実施主体を盛り込んだ。計画期間は遺産登録を見込む20年から10年間。約5年に1度、調査結果を総合的に評価してユネスコ世界遺産センターに報告する。
委員から物資輸送などに伴う外来種の侵入状況を把握するため、「港湾や空港施設と連携した保護体制が必要」という助言があった。
観光利用について、「世界遺産になると、今まで経験がないくらい人が増える。何人なら大丈夫か、生態系への影響を科学的に証明するのは難しい」とオーバーユース(過剰利用)を懸念する意見があり、「管理ができていないと手遅れになり、一気に危機遺産になる。重要なエリアは最初に厳しい定員を設け、ガイドを付けるようにしてコントロールすべき」と指摘した。
モニタリング計画は委員らの意見を反映して修正し、今年秋に奄美・沖縄の候補地4地域で現地視察を行うIUCNに提出する。
米田座長はモニタリング計画について「価値ある自然を末永く維持するための担保を示せた。地域住民と連携しながら実践することが大事だ」と評価し、IUCNの視察に向けて「多岐にわたる管理に関する取り組みを地道に続けた実績がある。きっちりフィールドで展開を示すことができればいい評価をしてもらえるだろう」と述べた。