「ロードキル対策が鍵」 IUCN理事の星野さん見解 世界自然遺産1周年で講演 伊仙町
2022年08月02日
世界自然遺産
【徳之島総局】世界自然遺産登録1周年を迎えた徳之島の伊仙町で7月30日、国際自然保護連合(IUCN)理事の星野一昭さん(68)を招いた記念研修会「世界自然遺産のいろは」があった。講演で星野さんは登録の経緯や意義について説明したほか、今年12月に期限が迫っている国連教育科学文化機関(ユネスコ)への報告については「徳之島の場合は希少野生動物のロードキル(交通事故死)対策が鍵になる」との見解を示した。
星野さんは東京都出身。1978年に環境省に入省し、鹿児島大学特認教授なども務め、日本各地の世界自然遺産登録に携わった。奄美・沖縄4島の登録に際しては世界自然遺産候補地科学委員会メンバーとして尽力した。昨年9月からIUCNの南・東アジア地域の理事を務めている。
星野さんは世界自然遺産の概要や経緯を振り返るとともに、今後の課題について言及。海外には登録を抹消された例があることを紹介し、「遺産登録されたということは世界が見ているということ。今後の環境保護政策が不十分だと判断されれば登録抹消もあり得る」と警鐘を鳴らした。
また今年12月1日までにユネスコへの提出が求められている報告については「アマミノクロウサギなどの希少野生動物の脅威となっているロードキル対策が鍵」と語った。
参加者からの「12月までに私たちができることはないか」との質問に対しては「今まで取ってきた対策の効果が問われ、さらなる対策強化を求められる可能性が高い」と予想し、「要求に対し一定の方向性を示せるかが重要。住民が自主的に取り組めるロードキル対策を実現できれば最も効果的だ」と住民を巻き込んだ取り組みの必要性を強調した。
研修会に参加した香西建太朗さん(22)=徳之島町金見=は「認定ガイドを目指しているので知識を深める機会にしたいと思い参加した。将来も徳之島が世界自然遺産でいられるか不安があったが、星野さんがIUCNの立場から分かりやすく説明してくれたので今後やるべき方向性が理解できた」と感想を述べた。
研修会は島内の環境保護団体「徳之島虹の会」が主催。会場となった伊仙町中央公民館には島内の認定ガイドなど関係者30人が訪れた。31日も同会主催の登録1周年記念イベントが天城町三京であり、一般、関係者などから約200人が参加。星野さんの講演のほか、国立公園内にある三京林道の散策や音楽祭が開催された。