ダイサギソウ盗掘か 5市町村条例保護の希少ラン、株ごと消える 龍郷町
2021年10月07日
世界自然遺産
龍郷町の山中で6日までに、絶滅の恐れがあり、奄美大島5市町村の希少野生動植物保護条例で採取が禁じられているダイサギソウが株ごとなくなり、盗掘されたとみられることが分かった。奄美大島は7月に世界自然遺産に登録されたばかりで、同町の担当者は「国内外から注目されている中で非常に残念な出来事。関係機関でパトロールを強化して希少種の保護に務める」としている。
ダイサギソウは千葉県以西に分布する地生ラン。奄美群島では奄美大島、徳之島に分布。日当たりの良い林縁に生え、秋に美しい純白の花を咲かせる。花の形がシラサギの飛ぶ姿に似ていることが和名の由来。開発や園芸採取などで減少し、環境省のレッドリストで絶滅危惧ⅠB類に位置付けられている。
地元の植物愛好家の男性が2日、現地を訪れ、ダイサギソウ1株が根こそぎなくなっているのを見つけた。現地では9月26日まで、花が咲いているのが確認されており、1週間以内に盗掘されたとみられる。
連絡を受けた環境省奄美野生生物保護センター、龍郷町、奄美署の担当者らが4日に現地を確認し、現場周辺でパトロールを行った。島内5市町村でつくる奄美大島自然保護協議会と連携して今後もパトロールを続ける。
龍郷町企画観光課の長谷場涼太郎主査は「世界自然遺産に登録され、奄美大島の宝は『世界の宝』として、次世代に受け継ぐべき価値が認められたが、希少種の盗掘は後を絶たない。住民や観光客に条例の周知を図り、豊かな自然を守っていきたい」と話した。
奄美・沖縄の世界自然遺産登録を視野に、島内5市町村は2013年10月、希少な動植物の保護を目的に共通の希少野生動植物保護条例を制定。ダイサギソウを含む植物35種と動物22種を指定して捕獲や採取を禁じた。違反した場合は1年以下の懲役か50万円以下の罰金が科せられる。