奄美大島いきものがたり

2024年06月07日

○宝石の由来 カワセミ

カワセミ(オス)

人気の野鳥ナンバー1といわれているカワセミ。カワセミの漢字表記は「翡翠」であり、これが宝石の名称の由来にもなっている。「空飛ぶ宝石」とも呼ばれる美しい鳥だ。日本本土に広く生息しており、もちろん奄美大島でも見られる。5月頃から渡ってくる夏鳥のリュウキュウアカショウビンと同じ仲間だ。

日本本土では、公園の池などにたくさんのアマチュアカメラマンが集まって写真撮影している。奄美大島はどうだろうか。島民とカワセミの話をしていて意外だったのが「島にはカワセミがいない。もしくは少ない」という声である。決してそんなことはなく、集落内の川や河口付近にだって普通に見られる。むしろ、見やすい方ではないかと思っている。

カワセミはオスとメスで見た目に違いがある。オスは嘴全体が黒いのに対して、メスは嘴の下半分は赤色だ。飛翔しているカワセミはまさに宝石のように光り輝いて見える。その美しさは見る者を魅了する。視点を変えると、雌雄や成長段階による違いなどの美しさ以外の楽しみも見えてくるかもしれない。

 

○名前が変わった アマミサクライソウ

アマミサクライソウ

この名前を知っている人は、かなり植物を詳しい方だろうと思う。かつてはサクライソウといわれており、国内では岐阜県や長野県、奄美大島だけに隔離分布する種類だった。葉緑体を持たず、光合成を行わない代わりに、菌類から栄養を補給する菌従属栄養植物だ。2021年、奄美大島産のものは新種「アマミサクライソウ」として発表された。アマミサクライソウは、日本本土のものよりも背丈が短くて5㌢ほどにしかならず、密集して花が咲くことが特徴だ。

私は「アマミサクライソウ」と発表される前に、一度だけ生育地を訪れたことがある。梅雨真っただ中で森の中はとにかく暑く、滑る山道を歩きながら、ようやくたどり着いた。周囲には似たような環境がありながらも、実際に生育している場所は限られていた。

共通種とされていた植物が、奄美大島産は新種となることもあれば、ユワンツチトリモチのようにヤクシマツチトリモチへと統合されることもある。遺伝子研究の進展により、これからも名前の変わる動植物は増えそうだ。

 

(平城達哉・奄美博物館学芸員)