奄美大島いきものがたり
2024年11月21日
○まるで案内人のよう キセキレイ
奄美大島で確認されている約320種の鳥類のうち、85%以上を占める約280種は渡り鳥である。ルリカケスやオオトラツグミなどの固有種が注目されることは多いが、渡り鳥の中継地として、奄美大島は非常によい立地条件と環境が整っている。
一言で「渡り鳥」といっても、毎年必ず渡ってくる種もいれば、ほとんどの人が聞いたことのない珍しい種がやってくることもある。キセキレイは年間を通して島で見られるのではないかと思ってしまうほどだ。「奄美の野鳥図鑑」(NPO法人奄美野鳥の会)でこれまでの記録を確認してみると、6月と7月を除く月で確認されている。
奄美大島に渡ってくるセキレイの仲間は、主にハクセキレイとキセキレイだ。ハクセキレイはコンビニの駐車場で見かけるほどの身近な鳥だが、キセキレイは生活圏から少し離れた水田や林道上で見られることが多い。車に接近してくると、まるで案内人のように車の前を低空飛行する。
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○クロウサギが好む ススキ
ススキはイネ科の多年草植物である。秋の訪れとともに、高さ1~2㍍ほどの先端に、さらさらとした花を咲かせる。咲き始めは白っぽいが、次第に黄金色に変わっていく。夕日に照らされる黄金色のススキの花は、何とも秋らしさを感じさせてくれる。
ススキは光のよく当たる環境に生育するため、林道沿いや日当たりのよい斜面などでみられる。アマミノクロウサギが好んで食べることも知られており、ススキの葉を少しミクロな視点で観察してみると、かじられた痕跡を確認できることもしばしばある。林道脇にススキの生えている路上では、フンをしていることも多い。さらに、ススキは密に直立して生えているため、アマミノクロウサギがかぎ分けて通ったと思われる獣道も発見しやすい。
私はアマミノクロウサギの生活を垣間見させてくれる植物だと勝手に思っている。ススキが生えているところには、あの動物がよく見られる。この植物と同じ環境には、あの植物も生えていることが多い。私はそんな動植物の関わりを大事にしながら、生き物を観察するようにしている。
(平城達哉・奄美博物館学芸員)