奄美大島いきものがたり
2024年12月06日
○鳥獣学者にちなんだ名前 オリイコキクガシラコウモリ
奄美大島には在来の陸生哺乳類が14種生息している。そのうち、半分以上を占める8種がコウモリの仲間だ。小中学校の出前授業でこの話をすると、決まって驚かれる。そもそも島で生活をしていても、コウモリを見かける機会はほとんどないため、そう感じるのは当然のこととも思う。
オリイコキクガシラコウモリは、環境省によって絶滅危惧ⅠB類、国内希少野生動植物種に選定されている希少種だ。昼間は洞窟や鍾乳洞などで群れを形成して休み、辺りが暗くなる頃に休息場所から飛び出して、昆虫などを捕まえて食べる。
私はコウモリを観察するために、さまざまな洞窟や鍾乳洞に入ってきた。洞窟の入り口でトグロを巻いているハブに遭遇したり、コウモリを探して上ばかりを見ていたら水場に足を突っ込んで長靴の中まで濡れたり、鍾乳洞内で迷ったりしたこともある。フィールドワークは危険が付き物なのである。
奄美大島にはオリイコキクガシラコウモリやオリイジネズミのように、名前に「オリイ」とつく動物が生息している。これは鳥獣標本採集家の折居彪二郎(おりい・ひょうじろう)氏にちなんだものである。
○「あれは桜?」 トックリキワタ
ブラジル原産のトックリキワタ。奄美大島にはあちこちで植栽されていて、ちょうど開花期を迎えている。ピンク色の大きな花は非常によく目立ち、これまでに何人かから、「あれは桜?」と聞かれたことがある。
トックリキワタの見た目には、さまざまな特徴がある。幹は徳利(とっくり)状に膨らんでいて、緑色の木肌にはなかなかに鋭いトゲがついている。アボカドのような見た目の実は、熟してくると次第にひび割れが起こり、やがて中から白い綿が飛び出してくる。白い綿には多数の種子も含まれていて、これが風に飛ばされて分布を拡大していく。この綿は座布団やクッションの詰め物に使われることもあるようだ。
1月ごろから結実し、春ごろには弾けた状態を見ることができる。いくつもの白い綿の塊が木からぶら下がっているのを初めて見たときは、いったい何だろうかと思った。(奄美博物館)