奄美大島いきものがたり

2024年05月10日

○リズミカルな鳴き声リュウキュウキビタキ

 

リュウキュウキビタキ

ゴールデンウイーク明けの奄美大島。多くの留鳥は繁殖シーズンの終盤を迎えるものの、森はまだ賑やかだ。渡り鳥のリュウキュウアカショウビンがさえずり、自然度の高い森では、リュウキュウキビタキのリズミカルな鳴き声が聞こえてくる。

リュウキュウキビタキは年間を通して奄美大島に生息している留鳥だが、情報が少なく、生息状況すらあまり知られていない。環境省レッドリスト2020でも、「情報不足」と掲載されている。ただ、繁殖期を迎える4月下旬頃からは鳴き声を発するため、他の季節に比べて、圧倒的に観察頻度は高くなる。鳴き声は「ツィチィチュルルピィヒヒーホィ」(「奄美の野鳥図鑑」)。観察したい人は、今がチャンスである。

これまで日本本土に生息するキビタキの亜種と考えられてきたが、2024年9月に公開が予定されている「日本鳥類目録改訂第8版」には、リュウキュウキビタキが「種」として独立する方向性が示されている。図鑑には、キビタキよりも体の上面が黄緑色っぽくて、背中や頭頂部の黒色の範囲も狭いと書かれている。

 

○身近な絶滅危惧種 カクチョウラン

 

カクチョウラン

奄美大島には、法律や条例で採取等が禁じられている動植物がたくさんある。そのことは読者の皆さまもよく知っていることであろうが、その中に島民にとって意外と身近な種も含まれている。その一種がカクチョウランではなかろうか。環境省レッドリスト2020では絶滅危惧Ⅱ類に、さらには鹿児島県の希少野生動植物種にも選定されている。

しかし、日本最大のランであり、林道沿いなどの日当たりがよい環境に生えることから、すぐにその存在に気づくことができる。私も植物に関心をもつ前から、カクチョウランの存在は知っていた。

現在、鹿児島県の条例に指定されている種であるため、採取することは禁じられている。しかし、その前に採取されたものは条例違反ではないため、今でも民家の庭や集落入り口に植栽されているものが見られる。

世界自然遺産に登録されて、奄美大島の自然が世界から注目されている。私たち島民にすると、「こんなものまで希少種に指定されているのか」と思うかもしれないが、世界的には貴重であるものだと知っていただきたい。

(平城達哉・奄美博物館学芸員)