奄美大島いきものがたり
2024年05月23日
○澄んだ声で鳴くリュウキュウカジカガエル
奄美地方は梅雨に入り、蒸し暑い日々が続いている。夜の濡れた路面には、リュウキュウカジカガエルが観察できる。多い時には、視界に20~30匹も入ってくるほどだ。奄美大島のカエルのうち、最も高い頻度でみられる。集落の平地から山地にかけて、周囲に水のある環境であれば、観察するのは容易だ。
体の大きさは2~4㌢ほど。鳴き声は「キュルルルーッ」。カエルにしては澄んだ声なので、虫の声に聞こえる人がいるかもしれない。雌雄で見た目は異なる。オスは鮮やかな黄色で体が小さく、メスはオスよりも茶色っぽくて体は大きい。
奄美大島に生息している在来のカエルは8種とされているが、リュウキュウカジカガエルだけが奄美・沖縄以外にも生息しており、北限はトカラ列島。また、八重山諸島に分布するカジカガエルは、2020年にリュウキュウカジカガエルから新種のヤエヤマカジカガエルに分類されるようになり、話題にもなった。
小さくて色も鮮やかなリュウキュウカジカガエル。繁殖のためにたくさんの個体が集まってくるような場所では、ヒメハブやガラスヒバァなどのヘビ類も出没するのでご注意を。
○雌雄で異なる花アカメガシワ
私は動物や植物の開花・結実等の状態によって、季節の移り変わりを感じ取ることに楽しみを見いだしている。アカメガシワは4月頃から雌雄で異なる形状の花を咲かせ、オオシマオオトラフハナムグリやカメムシの仲間などが蜜を求めてやってくる。梅雨が迫ってきていることを教えてくれるのである。
梅雨が始まる頃に熟す実に、よくやってくるのはケナガネズミ。実のついた部分をちぎって、樹上で食べているシーンは何度も見た。一見、美味しそうに食べていても、食べかけの実を、ぽいと投げ捨てることもある。味の良しあしがあるのだろうか。
ケナガネズミを観察するために夜の森でアカメガシワを探していると、たまに数百単位のアカギカメムシが葉っぱについていることがある。初めて見たときには驚いた。アカメガシワの葉の付け根部分から出ている蜜には、アリがやってくる。
アカメガシワだけでも、動植物の関係性がたくさん見えてくる。
(平城達哉・奄美博物館学芸員)