希少昆虫類の保全へ 大和村でワイルドライフセミナー 生息域外の取り組み紹介
2025年03月03日

伊丹市昆虫館の田中良尚学芸員(左)がアマミマルバネクワガタ(円内)など希少な昆虫類の保全をテーマに講演したセミナー=2日、大和村
環境省などが主催する2024年度あまみワイルドライフセミナー「絶滅しそうな昆虫をまもる~飼育室で、フィールドで~」が2日、大和村の奄美野生生物保護センターであった。伊丹市昆虫館(兵庫県)の田中良尚学芸員(47)が絶滅危機にある昆虫類の保全をテーマに講演。アマミマルバネクワガタなど希少種の保全のために、同館で行う飼育や繁殖などの取り組みを紹介し、知見の蓄積や野外での観察の重要性を訴えた。
セミナーは同センターが2000年に開所した当時から講演会の形で、調査や研究成果の地域還元を目的に開始。奄美群島の動植物を中心に幅広いテーマで、その道の専門家が登壇している。
セミナーで田中氏は、絶滅危惧種の保全について、①生息地で生息環境の調査や改善を行う「生息域内保全」②生息地の外の施設で飼育や繁殖を試み、最終的に自然の生息地に戻すことを目的とする「生息域外保全」―の二つがあることを説明。同館で本土や奄美、沖縄に生息する希少な昆虫類の繁殖や幼虫飼育方法の確立に取り組んでいることを紹介した。
アマミマルバネクワガタは環境省レッドリストで絶滅危惧Ⅱ類。奄美大島、徳之島、加計呂麻島に生息(請島に亜種のウケジママルバネクワガタが生息)し、奄美群島国立公園の指定動物。市町村条例も加え、生息域全域で採集が禁止されている。田中氏は徳之島で03年から毎年、同一地域で同種の個体数を調査しており、採集規制後に個体数が増加傾向にあることも紹介した。
セミナーには約40人が来場。現在、奄美大島で害虫被害が問題となっているソテツのナリ(実)を育てる取り組みを行っている奄美市の30代男性は「保全のために試行錯誤されている田中氏の話を聞き、どの分野も同じだと思った」と話した。
田中氏は今後に向けて「絶滅の危機にある生き物の保全のために、誰が実施しても育てることができるマニュアルのような保全技術を確立したい」と語った。