希少種保護へ対策協議 輪禍最多、生物の持ち出しも 奄美大島地区会合

2023年07月26日

ロードキルや希少種持ち出しなどの対策について協議した会合=25日、奄美市名瀬

2023年度奄美群島希少野生生物保護対策協議会(会長・中山直樹県自然保護課長)の奄美大島地区の会合が25日、奄美市名瀬のアマホームPLAZA(市民交流センター)であった。環境省や県、島内市町村、地元民間団体などの関係者40人が出席。野生生物の持ち出しや外来種の防除について情報を共有したほか、近年急増しているアマミノクロウサギのロードキル(交通事故死)に関する報告もあり、関係機関が連携して対策を強化することを申し合わせた。

 

環境省の報告によると、22年度に奄美大島で確認された昆虫トラップは15件。このうち8件が国立公園内に設置された違法トラップだった。奄美空港で確認された野生生物の持ち出し事案は47件。ほとんどが法令による規制がない生き物だったが、国指定天然記念物のオカヤドカリを持ち出そうとする事案もあった。規制種ではないシリケンイモリなどを大量に持ち出す人もおり、同省は生態系への影響を懸念している。

 

22年度に島内で発生したクロウサギのロードキルは107件で過去最多を更新。今年も6月末までに74件確認されており、昨年の同時期と比べて1・85倍と急増している。

 

県は昨年度、ロードキルが頻発する瀬戸内町の町道網野子峠線に、クロウサギなどが道路に出ないよう侵入防止柵を設置。対象の2区間400メートル内で交通事故死が確認されていないことから、一定の効果があると結論づけた。

 

各自治体や関係機関は23年度、ロードキルや野生生物の密猟・密輸を防止するキャンペーンのほか、端末用アプリを活用した希少種持ち出しの水際対策などに取り組む。今年5月に徳之島で特定外来生物のシロアゴガエルが初確認されたことを受け、奄美大島への侵入を防ぐための対策も強化する。

 

会合では最後に質疑応答があり、出席者から「外来植物の種子を人間や車が運んでしまわないよう、入山前に靴底を拭くマットや駆除装置を設置できないか」などの意見が上がった。