店舗に潜伏、わなで捕獲 天然記念物ケナガネズミ 目撃者「大きくて猫かと」 奄美市名瀬

2023年07月26日

繁華街の小売店で捕獲され、山に放たれたケナガネズミ=24日、奄美市名瀬(奄美市世界自然遺産課提供)

「ネズミにしては大きくて、猫かと思った」│。奄美・沖縄に生息する国の天然記念物ケナガネズミが24日、奄美市名瀬の繁華街「屋仁川通り」に姿を現した。沿道の小売店に1週間余り潜伏していたとみられ、専門業者のわなで捕獲した後、奄美市の担当課職員が近くの山林に放った。

 

ケナガネズミは奄美大島と徳之島、沖縄島の固有種。体長20~30センチと国内最大のネズミの仲間。尾が胴体より長く、半分より先端側が白い。背中の長い剛毛が名前の由来。環境省のレッドリストで絶滅危惧ⅠB類に指定されている。

 

現場は屋仁川通りにあるコンビニエンスストア「丸市商店」。同店関係者によると、今月中旬のある夜、出入り口から店内に駆け込むネズミのような動物を来店客らが目撃した。当時の目撃者は「猫のような大きさ」とも表現していた。

 

これ以来、同店では食品や調味料など一部商品が食い荒らされる被害が急増。いずれも営業時間外の午後11時~翌日午前10時に起きている様子だった。店側は「大きいドブネズミ」とみて粘着シートや毒入りの餌を置いたが捕獲できず、駆除業者に委託した。

 

駆除業者は現場の痕跡から暗所を中心に仕掛けを施したが、こちらも不発。毒餌は食べずに容器をひっくり返し、粘着テープは避けているようだった。「かなり賢い」と担当者。店休日の日曜日(23日)に仕掛けたわなにより、ようやく捕獲にこぎ着けた。

 

24日は朝、出勤した同店関係者がわなに掛かったケナガネズミを発見。駆除業者の担当者は「初めてのこと。ドブネズミじゃないので驚いた」と振り返る。捕まったケナガネズミは成獣とみられ、そのネズミらしからぬ大きさに通りすがりの人々も目を丸くした。

 

このケナガネズミは、連絡を受けて駆け付けた市世界自然遺産課の担当職員が経緯や状態を確認し、近くの山林に放った。担当職員が現地で確認したところ、口元に小さい傷があるのみで目立った外傷はなく、元気な様子だったという。

 

同課によると、ケナガネズミは近年の個体数回復に伴い、市街地に近い山間部まで生息域が拡大しているとみられる。人間の生活圏に出没し、すみ着くケースもある。担当者は「身近に希少生物がいることを意識し、特徴を知っておいてほしい」と呼び掛けている。

 

希少生物の死骸や傷ついた個体を見つけたときは、電話0997(55)8620環境省奄美野生生物保護センター、または近くの市町村役場などに連絡を。