無事に本土へ渡って けがから回復、サシバ放鳥 宇検村

2023年03月24日

けがから回復して放鳥されたサシバと新屋獣医師=23日、宇検村阿室

宇検村のタンカン畑でけがをして保護された渡り鳥のサシバが23日、発見場所近くで放された。本土へ北上する渡りの季節を迎えており、治療に当たった奄美野生動物医学研究会の新屋惣獣医師(29)は「何百キロも飛ぶことになる。無事に渡ってくれれば」と願った。

 

サシバはタカの仲間で体長約50センチ。「ピックイー」と甲高い声で鳴く。東北から九州地方で繁殖し、秋ごろに南下して南西諸島や東南アジアなどで越冬する。環境省のレッドリストで絶滅危惧Ⅱ類。

 

宇検村平田のタンカン畑で1月31日、カラスよけに張られたテグスにサシバが絡まっているのを畑を所有する住民が見つけ、環境省奄美野生生物保護センターへ連絡。サシバは奄美市名瀬の奄美野生動物医学研究会へ運ばれた。

 

新屋獣医師によると、保護されたのは成鳥の雄。右翼の靱帯(じんたい)を損傷しており、衰弱していた。翼を固定して治療した後、2月中旬から室内でリハビリを続け、野外でも十分に飛べると判断した。

 

サシバは23日朝、同村阿室の畑で放され、ゆっくりと旋回しながら山の向こうへ飛んでいった。

 

野鳥がテグスや防鳥ネットに絡まって発見が遅れると、死んでしまうことがある。新屋獣医師は「発見した場合は迅速に通報してもらうことで、早期治療と野生復帰につながる」と注意喚起した。

 

同研究会は先月発足。奄美市名瀬で年内に野生動物専用の治療施設を開設する予定で、「保護しても野生に帰せない個体もいる。奄美大島の野生生物に適切な医療を提供できる体制づくりに努める」としている。