猫がケナガネズミ捕食か 死骸からDNA検出 奄美大島
2021年04月09日
奄美市住用町の集落内で今年2月、国の天然記念物で絶滅の恐れがあるケナガネズミの死骸が見つかった。死骸は頭部がなく、研究機関が遺伝子を調べたところ、猫のDNAが検出された。集落内で猫に襲われたとみられる。環境省奄美野生生物保護センターは、希少な動物が生息する森林に近い集落では野良猫や放し飼いの猫が希少種を捕食する恐れがあるとして、住民に室内飼いなど猫の適正飼養を呼び掛けている。
ケナガネズミは奄美大島と徳之島、沖縄島の固有種。体の大きさが20~30㌢と国内最大のネズミの仲間。尾が胴体より長く、先の半分は白いのが特徴。夜行性で主に樹上で生活している。環境省のレッドリストで絶滅危惧ⅠB類。種の保存法で国内希少種に指定して保護している。
環境省によると、ケナガネズミの死骸は2月13日、住用町の集落内にある住宅の塀の上で住民が発見。連絡を受けた奄美野生生物保護センターの職員が現地で確認したところ、死骸は腐敗が進み、かみ跡などは確認されなかったが、頭部がないなど発見時の状況から猫による捕食と推測。国立環境研究所が遺伝子検査を行った結果、猫のDNAが検出された。
同省は、集落周辺に現れたケナガネズミを集落内で放し飼いされている猫か野良猫が捕食したとみている。死骸が発見された住宅では猫を飼っておらず、住民への風評被害を防ぐため、集落名は非公表とした。死骸から猫の痕跡が確認されたことを受けて、環境省と奄美市は3月、住用町の集落区長会で報告し、飼い猫の適正飼養を注意喚起した。
奄美大島では野生生物を襲うマングースの駆除が進んだことで、ケナガネズミなど希少種の分布域が拡大して集落周辺にも現れるようになった。奄美野生生物保護センターの後藤雅文離島希少種保全専門官は「今後も同じような事例が集落周辺で発生する可能性がある。関係機関と連携して対策を進めたい」としている。
島内5市町村は飼い猫の適正飼養管理条例で、飼い猫の登録やマイクロチップの装着、放し飼いの猫への不妊去勢手術などを飼い主に義務付けている。5市町村で構成する奄美大島ねこ対策協議会事務局の奄美市環境対策課は「猫が希少種を襲う被害が発生していることを多くの住民に知ってもらいたい。猫を飼っている人は適正飼養に協力してほしい」と呼び掛けた。