盗掘・盗採防止へパトロール強化 奄美大島

2020年08月09日

希少な植物の盗掘現場を確認するパトロール員ら=8日、奄美大島

希少な植物の盗掘現場を確認するパトロール員ら=8日、奄美大島

 奄美大島で相次ぐ希少な動植物の盗掘・盗採を防止しようと、環境省奄美群島国立公園管理事務所は7月から、島内一円で休日のパトロールを実施している。関係機関による平日や夜間のパトロールと合わせて、監視体制を強化する。同事務所は「関係機関と連携して、島の財産が外に持ち出されないように守っていきたい」としている。

 パトロールは同省の国立公園等民間活用特定自然環境保全活動(グリーンワーカー)事業の一環。2018年度から、あまみ大島森林組合に委託。20年度は来年3月末まで、土曜、日曜を中心に、パトロール員が4人体制で国立公園の特別保護地区や第1種特別地域などを巡回する。

 不審な人物や車両を発見した場合は、全地球測位システム(GPS)で位置や時間を記録し、緊急の場合は同省や警察など関係機関に通報する。一般車両や観光客にはチラシを配布し、法律や条例で捕獲や採取が禁止されている希少な動植物を啓発している。

 8日は2人1組で宇検村、大和村の林道をパトロールし、希少な植物の盗掘現場を訪れ、現在の生息状況を確認した。同森林組合の川畑敏彦業務部長は「パトロールを始めたころは不審な車も多かった。奄美の世界自然遺産登録に向けて、環境省と密に連携を取って希少な動植物を守っていきたい」と話した。

 同島では、島内5市町村でつくる奄美大島自然保護協議会や、同省が委託した関係団体が平日の日中や夜間にパトロールを実施しているが、違法な盗掘・盗採は後を絶たない。

 同事務所によると、島内では今年4月以降、県の条例で採取が禁じられているカクチョウランの盗掘被害が相次いだほか、無許可の工作物設置が禁止されている国立公園の特別地域内で、昆虫を捕獲するためのトラップが数件見つかっている。昆虫などの島外への持ち出しについて、空港からの問い合わせも多いという。

 同事務所の後藤雅文離島希少種保全専門官は「奄美大島では盗掘、盗採が多いと感じる。パトロールを強化することで抑止につながる。島全体で貴重な自然を保護したい」と語った。