絶滅危惧種のトカゲ捕食 外来種イタチ、喜界島全域に
2019年03月10日
喜界島に移入された国内外来種のニホンイタチのふんから、絶滅危惧種のキノボリトカゲの指の骨が見つかったことが奄美海洋生物研究会(興克樹会長)の調査で分かった。同島ではイタチの餌となるキノボリトカゲなど在来生物の減少が懸念されていたが、捕食が確認されたのは初めて。イタチは島の全域に定着しているとみられ、興会長は「生態系に影響する恐れがあり、早急な対策が必要」と指摘している。
ニホンイタチは本州、四国、九州などが原産。1950~70年代、サトウキビなどに被害を及ぼすネズミの駆除を目的に奄美、沖縄の島々に導入された。奄美群島では喜界島、沖永良部島、与論島の3島に定着。在来種のヘビやトカゲ、昆虫などを捕食して減少させる恐れがあり、環境省は積極的に防除を行う必要がある緊急対策外来種に指定している。
喜界島での調査はイタチの生息状況や在来種への影響を把握するため、奄美海洋生物研究会が公益社団法人ゴルフ緑化促進会の国立・国定公園支援事業の助成を受けて2018年7月に実施した。
採取した60個のふんを分析した結果、奄美、沖縄諸島に分布し、環境省のレッドリストで絶滅危惧Ⅱ類に分類されているキノボリトカゲの捕食が明らかになった。
同研究会によると、同島ではこれまでにイタチの詳しい調査は行われておらず、在来種への影響は分かっていなかった。群島内では与論島で、イタチの捕食の影響で固有種も含め3種の爬虫(はちゅう)類が絶滅したという。
喜界島のイタチの生息状況について、興会長は「山地から海岸まで広範囲に定着し、生息密度も高いのではないか」と分析し、「地元では昔と比べてトカゲを見なくなったと言われている。いつの間にか在来種がいなくなる可能性もある」と警鐘を鳴らす。
調査結果を受けて、環境省は今月にも、喜界島でイタチの捕獲調査を開始する。同時に島内約20カ所に自動撮影カメラを設置してモニタリング調査を行う。同省奄美自然保護官事務所の早瀬穂奈実自然保護官は「イタチの生息状況を把握して今後の対策を検討したい」と述べた。