自然保護の重要性再確認 ごみ投棄や輪禍など課題共有 徳之島でシンポジウム
2018年12月17日
【徳之島総局】奄美・沖縄の世界自然遺産登録に向け住民の意識啓発を図る「わきゃしまのいきむんきゃシンポジウム」(宮崎大学フロンティア科学実験総合センター、徳之島3町共催)が16日、徳之島町生涯学習センターであった。地元自治体や民間団体は遺産登録に向けた取り組みを発表。動物の専門家は遺産候補地に生息する動物の研究成果を報告した。来場者はごみ投棄やロードキル(輪禍)など島内の課題を共有し、自然保護の重要性をあらためて確認した
シンポジウムは自治体の取り組みを発信するとともに、住民生活と自然保護の関わりの共通認識を図る目的で開催。地域住民ら約90人が来場した。
徳之島3町の担当者は希少野生動植物保護条例の運用や外来種対策、教育現場での自然体験提供など取り組み事例を発表。遺産登録に向けた課題として▽希少種などの盗掘▽ごみ投棄▽ロードキル―など人的要因を挙げ、地域の理解と協力を呼び掛けた。
マリンサービス海夢居(かむい)代表の鈴木竜爾さんは、スキューバダイビングやクジラを観察したり一緒に泳いだりするホエールアドベンチャーで来島した観光客の島内消費額が1人当たり平均約8万円と試算。「自然環境を守っていくことは、島内の経済効果にもつながる」と強調した。
研究成果報告では城ヶ原貴通氏(宮崎大学フロンティア科学実験総合センター研究員)、荒谷邦雄氏(九州大学共創学部教授)、長嶺隆氏(NPO法人どうぶつたちの病院沖縄理事長)が遺産候補地に生息する希少な生き物の現状などについて発表した。
城ヶ原氏はトクノシマトゲネズミについて「徳之島でノネコの捕獲事業が始まった2014年度以降、分布調査結果では増えている」と解説。荒谷氏は専門とする昆虫学の視点から「生物地理区上で2地区の接点に位置する奄美・琉球諸島は、豊かな照葉樹林もあり多くの昆虫が生息する」と述べた。長嶺氏は絶滅の危機にあったヤンバルクイナの飼育下繁殖事例を紹介し「絶滅の危機に陥る前に手を打つことほど大切なことはない」と訴えた。