野鳥研究者が環境保全訴える 奄美市

2019年02月20日

講演した水田拓さん=18日、奄美市名瀬

講演した水田拓さん=18日、奄美市名瀬

  南西諸島の野鳥の研究者らが執筆した「島の鳥類学―南西諸島の鳥をめぐる自然史」(海遊舎)の編著者2氏の講演会が18日、奄美市名瀬の奄美博物館であった。講演した環境省奄美野生生物保護センター希少種保護増殖等専門員の水田拓さん(49)は絶滅寸前から回復した奄美大島固有のオオトラツグミの研究を紹介し、「今ある自然をそのまま守ることが重要」と環境保全を呼び掛けた。

 

 「島の鳥類学」は2018年9月刊行。全22章。研究者28人が南西諸島に生息する野鳥の独特な生態や保全活動などを紹介。講演会は、同書が今年の沖縄タイムス出版文化賞正賞を受賞したことを記念して同センターが主催。約60人が聴講した。

 

 水田さんは講演で、南西諸島の鳥類の研究について、固有種が多く、島ごとに固有の生態系が見られることなどから「魅力的な調査地」と紹介した。

 

 奄美大島でオオトラツグミが生息地の開発や外来種のマングースの捕食などによって減少し、「幻の鳥」とも呼ばれていたと説明。100羽以下とされた推定生息数は近年、マングースの駆除などによって2千~5千羽程度まで回復したとして、「もはや『幻の鳥』ではない」と強調。保全に向けて「森林伐採の管理と外来生物の防除が重要」と呼び掛けた。

 

 北海道大学大学院理学研究院教授の高木昌興さん(51)は講演で、琉球列島に生息するリュウキュウコノハズクの研究を紹介。

 

 一夫一妻のはずの沖縄・南大東島の固有亜種ダイトウコノハズクの雌が、森林が少なく限られた生息地の中で、「浮気」をすることで近親交配を回避することや、血縁を認識できる可能性などについて考察した。

講演した高木昌興さん=18日、奄美市名瀬

講演した高木昌興さん=18日、奄美市名瀬