ノネコ用わなにクロウサギ 2匹の死骸確認 徳之島

2023年02月09日

クロウサギの死骸が見つかったものと同型のわな=8日

徳之島で国指定特別天然記念物のアマミノクロウサギ2匹が、野生化した猫(ノネコ)の捕獲用わなにかかって死んでいたことが8日までに分かった。関係者によると、希少野生動物を保護する目的で仕掛けたわなが原因で、クロウサギが死んだのは初めて。南海日日新聞の取材に対し、環境省徳之島管理官事務所は「本来、起きてはならないこと。事態を重く受け止めて再発防止に努める」とコメントした。

 

同事務所によると、わなが仕掛けられていたのは徳之島町の林道「山クビリ線」。1月17日、近隣住民から「クロウサギがわなにかかって死んでいる」と同事務所に連絡があり、職員が現地でわな2基に各1匹の死骸を確認した。死骸は腐乱が進み骨と皮だけの状態で、わなにかかった時期や死因、性別などは判明していない。

 

徳之島では、ノネコがクロウサギなどの希少野生動物を捕食する問題がたびたび発生しており、環境省は捕食対策として2015年からわなを利用した本格的な猫の捕獲を開始した。現在、わなの設置や運用は環境省から委託を受けた島内団体が行っている。

 

今回クロウサギの死骸が見つかったのは、21年6月の豪雨で発生した崩落などが原因で立ち入り禁止となった区域。環境省と同団体は道路事情の悪化などから昨年7月、わなの回収を決めたが、実際には回収されずに3基のわなが残されていた。

 

使用されていたのは金網製のかごわなで、動物が入って踏み板に触れると扉が閉まる仕組み。通常は扉を閉めた状態で設置しておき、ノネコの目撃情報が得られた場合に、扉を開け餌を仕掛けていた。同団体では、餌を仕掛けて扉が開いているわなは最低でも1日1回は確認するルールを設けていたが、問題のわなは点検した際に扉が閉まっていたため、詳しく調べていなかったという。

 

団体の広報担当者は「人為的でない限りわなの扉は開かない。クロウサギが実際に入っていたということは扉を閉め忘れた可能性がある。チェック体制を見直して再発防止に努める」と話した。