ロードキル・ガイド体制の対策強化を ユネスコ報告書案協議 世界遺産地域連絡会議・徳之島部会

2022年07月20日

世界自然遺産

アマミノクロウサギなどのロードキル対策で道路への侵入防止ネットを設置する子どもたち=2021年11月、天城町

「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」の世界自然遺産地域連絡会議の徳之島部会が19日、オンラインで開かれた。関係者ら約50人が参加。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会が要請した課題4項目の報告書案について協議した。希少動物のロードキル(交通事故死)や、観光客を受け入れるエコツアーガイドの管理体制について、対策の強化を求める声が相次いだ。

 

昨年7月の奄美・沖縄の世界自然遺産登録に伴い、世界遺産委員会が示した課題は▽特に西表島における観光客の制限(観光管理)▽アマミノクロウサギなど絶滅危惧種のロードキル対策―など。今年12月1日までにユネスコへの報告を求めた。

 

関係機関と専門家で構成する特別チームがまとめた報告書案では、ロードキル対策について「有効性のある対策が不十分な地域も見られた」として、奄美大島と徳之島でクロウサギなどが道路に出て来ないように、侵入防止柵の設置など対策の強化を検討する方針を示した。

 

徳之島では、クロウサギのロードキルが多発している5カ所を優先して対策を検討するエリアと位置付けた。具体策として、特に21年までの5年間で18件に上る事故死が確認された天城町の県道618号(松原轟木線)で、昨年11月に導入した侵入防止ネットの事例を盛り込んだ。

 

今後の具体策は示されておらず、自然保護関係者から「(侵入防止柵の設置など)目に見える形で対策を強化してほしい」と要望があった。クロウサギは県道などの同じ場所で確認され、事故死するケースが多いとして、「生態や習性などを研究して防ぐ方法の検討を」との指摘もあった。

 

観光管理について、エコツアー関係者から「案内した客に『ガイドを探すのに半日かかった』と言われた。徳之島は体制づくりが遅れている。行政と連携してスムーズにツアーに参加できるシステムを構築したい」という声も寄せられた。

地域連絡会議は行政や地元団体など関係機関の調整や合意形成を図る目的で設置され、奄美・沖縄の4地域にそれぞれ部会を設けて遺産地域の適正な管理の在り方を検討している。