奄美大島いきものがたり

2024年02月21日

○恐るべき飛翔力 ハヤブサ

スピードが特徴のハヤブサ

先日、家族で野鳥を探しているときに知り合いがいた。知人はフィールドスコープでハヤブサを観察していた。3歳の息子にとっては「ハヤブサ=新幹線」。今、話題になっているハヤブサが「鳥」だと認識するには時間がかかっていた。

島では少数のハヤブサが越冬する。全長50㌢ほどになる猛禽類(もうきんるい)の仲間だ。上空を水平に飛ぶときのスピードは時速70~90㌔。獲物を捕らえるために急降下する際のスピードには、389㌔という記録もあるそうだ。

海岸にはたくさんの渡り鳥が渡来する。カモやシギ、チドリが中心で、ハヤブサの獲物でもある。これらの鳥が一斉に飛び立ったり、干潮のリーフに全く姿がなかったりするときは、ハヤブサの存在を疑う。周囲を見渡すと、実際に姿を確認できることもあれば、襲われた鳥の羽毛があちらこちらに散らばっていることもある。

少し前に至近距離でハヤブサを確認した。すぐに飛翔したため、ファインダー越しには姿を追いきれずに撮影を諦めた。目視で発見したときにはすでに100㍍以上先にいた。さすが、「スピードスター」。ハヤブサの飛翔力、恐るべし。

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○こんなところに固有種 オニキランソウ

集落近くにも群落を形成するオニキランソウ

私は2016年に右腕をケガして、愛用の望遠レンズを持てない時期があった。左腕だけでも使いこなせるデジカメをもって植物を観察・撮影してみようと思ったのが、〝植物沼〟にハマったきっかけである。

植物素人の私が、最初の頃に観察したのはシソ科のオニキランソウ。集落内の道路脇に大きな群落を形成していて、花は満開だった。同行者から奄美群島の固有種であることを聞き、「こんなところに地域特有の植物が生えるのか」と驚いた記憶がある。初めは仲間から教えてもらった場所を探しに行っていたのだが、次第に自分でも新規の生育地を開拓するようになった。あっちにもこっちにもオニキランソウがあることに気付いた。

最近はなかなか植物散策に出掛けられていないが、「あ!ここにもこの植物があったのか」という感覚を久しぶりに味わいたくなった。毎年、オニキランソウの花を見るたびに、植物にも興味を持ち始めた頃を思い出す。

(奄美博物館)