徳之島での経験に感謝 応用言語学の博士号取得目指す 元天城町ALTのミズカミさん(米国ハワイ州)

2024年05月28日

芸能・文化

天城町ALTを経て、米国ハワイ州の大学で応用言語学の博士号取得を目指すミズカミ・マイカさん=12日、同州オアフ島ホノルル市

天城町の外国語指導助手(ALT)を経て、古里の米国ハワイ州で応用言語学の博士号取得を目指す大学院生がいる。ミズカミ・マイカさん(33)。同州オアフ島にあるハワイ大学マノア校で研究に励み、今年の秋学期からは同大学の講師としてオーラル・ヒストリー(口述歴史)の科目を受け持つ。徳之島での経験がモチベーションにつながっているといい、「楽しかったことをいつも思い出し感謝している」と懐かしそうにほほ笑む。

 

ミズカミさんは同州カウアイ島出身。島南部のエレエレで生まれ育った。日系5世で、4分の1は沖縄系移民の血を引く。

 

オレゴン州のウィラメット大学で日本語を専攻。卒業後、2013年8月に天城町教育委員会にALTとして着任し、16年8月までの3年間、町内の小中学校で児童生徒に英語を教えた。

 

「まるでハワイに帰ったような気分だった。昔はカウアイ島にもサトウキビ畑があり、徳之島の風景と似ていて懐かしさを感じた」と振り返る。任期中は青年団に加わり、地域活動にも精力的に取り組んだ。

 

奄美群島が日本復帰60周年を迎えた13年は、奄美大島で開かれた群島各地の青年団などが出演する記念イベントに参加。同町の連合青年団はミズカミさんが教えたフラダンスを披露した。このほか、中高生らが演じる島口(方言)ミュージカルに脇役で出演したり、島内のエイサー団体に所属したりと地域住民との交流を広げた。

 

最後の年にはトライアスロンにも挑戦。「沿道で教え子や知り合いが応援してくれたおかげで最後まで頑張ることができた」と笑顔を見せる。

 

天城町での任期を終えて帰郷し、ハワイ大学で言語学の修士号を取得。19年から博士課程に進んだ。現在は自身がルーツを持つ沖縄に焦点を当て、社会言語学の観点から、世界各地に暮らす沖縄系の人々による多国籍・多言語的な交流をテーマに研究している。

 

博士号取得を目指しながら、同大学の口述歴史センターに勤務。太平洋戦争中にハワイに設置された日系人強制収容所について、関係者から話を聞いて記録するプロジェクトなどに取り組んでいる。「口承の記憶が歴史を知る上での公的な資料になり得る」と話し、「日系や沖縄系の人々の歴史などを社会言語学の視点から教えたい」と意気込んだ。

 

趣味は折り紙や版画、水引きアート制作、お菓子作りなど多才なミズカミさん。ALT時代は徳之島の学校や病院で折り紙の個展を開いた。

 

「島口の『おぼらだれん』をハワイでも使っている。徳之島で素晴らしい人たちに出会えた。いつかまた会いたい」