集落本来の八月踊り復活へ 瀬戸内町実久
2019年10月09日
芸能・文化
瀬戸内町加計呂麻島実久集落(安田則夫区長、11世帯16人)の出身者有志が同集落の八月踊り復活に向けた取り組みを始めた。7日にあった実久三次郎神社大祭では、これまでに覚えた4曲を披露。中心となって復活に取り組む長瀬孝一さん(80)=同町清水=は「今後も踊れる曲を増やし、若手につなげていきたい」と力を込めた。
出身者や住民によると、同集落の八月踊りは20年ほど前まで問題なく祭りの最後に踊られていたが、踊りができる住民の高齢化や島外への引き揚げ、受け継ぐ世代の不在などで次第に踊ることができなくなった。近年は他集落住民の力を借りて踊っている。
シマ(集落)本来の八月踊りを復活させたい―。長瀬さんら出身者の思いは年を追うごとに募ったが、踊りを指導できる人材も動画や歌詞集などの記録もなく、取り組みはなかなか進まなかった。今年3月、長瀬さんの下に東京都在住で同集落出身の露﨑博子さん(71)から動画記録(DVD)が届いたことで弾みがついた。
長瀬さんは、北九州在住の出身者から数十年前に送られてきた八月踊り唄の録音テープを起こし、歌詞集を作成。町内在住の出身者らに声を掛け、8月から祭りに向けた練習会を始めた。17曲全てを習得するには時間が足りないため、比較的覚えやすい「ほこらしゃ(足なれ)」「はぎゃぐぃ」など曲を選び、1曲ずつ担当を決めて振り付けを覚えた。
7日の本番では、長瀬さんがマイクを使って歌い、各踊りの担当者が手本を示して参加者を先導した。
復活へ向けた大きな一歩に長瀬さんは「同じ思いを持った出身者がタイミングよくつながったことで今回の取り組みが実現した」と喜び、「来年はみんなで歌も歌えるように練習を続けたい。八月踊りには曲順があるので、やはりその通りに踊れるようにもしていきたい」と張り切っている。
露﨑さんは1998年、八月踊りの継承に危機感を感じ、地元住民の協力を得て踊りを収録した本人。関東でも出身者らで実久の八月踊りを継承しようと練習を続けているという。地元での取り組みを聞き、「うれしい。東京にいてもシマを愛する思いは変わらない。いつか一緒に踊ることができたら」と感激した様子だった。