喜界島の「先祖祭」考察 外内さん、年中行事を紹介 沖縄民俗学会

2019年01月31日

芸能・文化

喜界島の年中行事について発表する外内さん=26日、沖縄県立芸術大学

喜界島の年中行事について発表する外内さん=26日、沖縄県立芸術大学

 【沖縄・佐久本薫通信員】沖縄民俗学会(稲福みき子会長)の1月例会が26日、那覇市の沖縄県立芸術大学であった。喜界町文化財保護審議会委員の外内淳さんが招かれ、「喜界島の年中行事~豊年祭・先祖祭を中心に」と題して発表した。約20人が参加。沖縄の年中行事との類似点や相違点に関心を寄せた。

 

 外内さんは、初めに喜界島の概要をスライドで紹介。小型無人機で撮影した360度のパノラマ画像を使い、島の景観や特徴的な地形を一望した。続いて島の主な伝統行事を月ごとに示し、目的に応じて祖先祭祀、農耕儀礼、悪霊払い、集落の親睦を深める行事に分けられると解説。このうち旧暦8月から9月にかけて行われる一連の行事について説明した。

 

 旧暦8月初丁(ひのと)のシチウンミ(節折目)では、子どもの健康を祈る「シチャミ」(節浴)が行われる。井戸の若水でススキ葉をぬらし、子どもの頭をなでながら「大きくなれなれ」などと唱えるものだが、今では数家族しか続けていない。外内さんは1985年に各集落のシチャミを調査。唱え言や儀式の内容が集落で変わるとし、「集落や個人の多様な捉え方で続いてきた」と話した。

 

 また、節折目の5日後に行われるシバサシについて、島の北側ではウヤンコー(先祖祭、墓祭)と同じ日に行われるが、南側ではホースマツリ(高祖祭)として別の日に行う。死者の洗骨・改葬も北側ではシバサシの日に、南側では高祖祭の日に行われる。こうした儀式が南北で異なる理由は明確には分かっていないという。

 

 会場からは「アラホース(故人が最初に迎える墓祭)は洗骨・改葬前の死者を祭るのか」といった質問や、「沖縄本島や宮古・八重山の年中行事と比べ、似ているところと違うところがあって興味深い。墓行事と先祖行事が合体しているのが不思議だ」との感想があった。

 

 南城市から参加した井口学さんは、「沖縄の行事にはない側面を見ることができた。奄美を知ることが沖縄文化の新たな発見につながる」と話した。