人に優しい鹿児島に 奄美、新知事へ期待と注文
2020年07月15日
政治・行政
「コロナで打撃を受けた観光業に目を向けて」「離島の高齢者が安心して暮らせるように」―。12日投開票の鹿児島県知事選で、前九州経済産業局長の塩田康一さん(54)が当選した。奄美の有権者からは、経済振興や医療福祉施策の充実など、県政の新トップに対し、さまざまな注文や期待の声が聞かれた。
奄美大島商工会議所(奄美市名瀬)の有村修一会頭(63)は、新型コロナウイルス感染症の収束を見据えた経済の立て直しに対する行政手腕に期待。「東京奄美会など郷友会の行事にも毎回顔を出す人で私もよく知っている。中小企業などの実情に明るく、経済をはじめ奄美をよく知るエキスパート。大きなことはあまり言わないが、(経済再生を)きっとやってくれる」と歓迎した。
塩田さんが幼少期を過ごした徳之島でも初当選を喜ぶ声が聞かれた。伊仙幼稚園で同じクラスだった徳之島町教育委員の清瀬利律子さん(54)=同町亀津=は「エリートだけど偉ぶらず、人の声に耳を傾け、今も昔も周囲の人たちを大事にする性格」と塩田さんの人柄を評し、「所得向上と教育環境整備を重点に施策を進め、補助金に頼らず自立できる島にしてほしい」と訴えた。
離島医療・福祉政策の充実を求めるのは喜界町の農業女性(73)。「ただでさえ不安なお産を喜界島の妊婦は島外の病院へ行かないといけない。離島でも安心してお産に臨める環境整備や、子育てできる環境づくりを進めてほしい。年金も受け取り年齢が徐々に上がっている。高齢者も安心して暮らせる、人に優しい鹿児島県に」と要望した。
「私は(塩田さんを)全然分からず、意外な人が当選した」と語るのは選挙期間中、候補者が1人も訪れなかった与論町の商業女性(60代)。「顔つきは良さそうだ」とし、「新型コロナの影響で打撃を受けている観光業に目を向けた政策に力を入れて」と注文した。
沖永良部島・和泊町のサトウキビ農家町田克彦さん(53)は「各候補の情報が少なく、島民の関心は高まらなかったとの印象を受けた」と選挙戦を振り返り、新知事には「農業用資材の輸送コスト削減を」と農業施策の充実に期待した。
奄美群島広域事務組合管理者の朝山毅奄美市長は、新型コロナ感染拡大防止や世界自然遺産の登録推進など山積する県政課題を挙げながら「経済産業行政や地方創生に携わってきた経験を生かし、市町村や県民一人ひとりに寄り添ったかじ取りを期待したい」とコメントした。